【パリ(フランス)23日=山戸英州】パリ五輪の選手、関係者が滞在する選手村が同日、報道陣に公開された。各国の選手間で話題になっているのが今大会から初お目見えした通称〝瞑想(めいそう)部屋〟だ。選手のメンタルヘルスに対応した新空間に本紙記者が潜入した。
パリ北部の3つの市町村にまたがる選手村には、ピーク時に1万4500人の選手、関係者が滞在する。総面積52ヘクタールの敷地に、80棟のマンションが立ち並ぶ壮大な規模で、24時間営業のレストラン、スーパーマーケット、トレーニングルーム、郵便局、美容院などがそろっている。
一方、建物内の施設は〝持続可能な社会〟を意識して簡素化されているのが印象的。居室内にはエアコンがなく、水流式の床冷房と段ボールベッドというシンプルなつくりになっている。
その中で選手たちに好評なのが〝瞑想部屋〟だ。日本選手団が「TEAM JAPAN」と書かれた赤、白の横断幕を掲げて滞在しているマンション棟からほど近くにあるトレーニング施設の2階にある。
「SAFE ROOM」とだけ表示されており、ちょっと怪しい雰囲気。恐る恐るエレベーターに乗って訪れてみると、扉が開いた瞬間、うす暗い照明が出迎える。
壁にはコンセプトが7カ国語で書かれており、一番下には日本語で「内なる平和があなたに外なる力をあたえます」と記されていた。実際に足を運んだ日本選手団関係者によると、最新のVR機材を用いて瞑想しながら10分ほどのプログラムが用意されているという。
近年は座禅、瞑想がスポーツ、ビジネスに効果があるとして、大手企業の研修などに採用されている。五輪選手村に瞑想施設が開設されたのは今回が初めて。運営担当者は「五輪選手にも禅で得られるものがあり、好記録につながる」として採用されたという。
1階のジムでトレーニングをした後、2階にあるこの部屋で瞑想して精神を落ち着かせてから居住スペースに戻る選手が多い。各国のメンタルヘルスケアの担当者が次々と施設を見学し、記者が取材中もギリシャ代表の担当者が「ここは素晴らしい。夜は何時まで使えるのか?」と熱心に質問する姿もあった。
この様子を伝え聞いたボクシング日本代表関係者は「正直、よく分からない施設だったので足を運んでいなかったが選手とも相談して検討する」と興味津々だった。
部屋の入り口には切手の貼られたポストカードと特製の黄色い郵便ポストが設置されている。これも、家族や恋人に手紙を書くことで、リラックス効果を得る狙いがある。
大きな重圧を抱えた選手たちにとって、メンタルが成績の鍵。瞑想で好記録続出が期待できるかもしれない。