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肉道場入門! 名古屋「焼肉あさひ」で知る良質肉の魅力 定番だけでなく好事家垂涎の部位も充実 新しい「大衆焼肉」を提案

zakzak by夕刊フジ 2024年9月10日 6時30分

★絶品必食編

肉料理店には無数の階層がある。大衆的な焼き肉店から高級肉料理店まで。ざっくり言うと1人数千円から数万円まで、無限のお会計がある。

誤解を恐れずに言えば、安い焼き肉店と高級フレンチの肉は質が違うが、焼き肉好きとしては、いい肉は大衆的なしつらえの店でこそ提供してほしい。長く焼き網や鉄板の前で焼きの研さんを積んできた、焼き肉フリークはそんな願いを抱えながら、各地域で「いい肉を安価に提供する」老舗に通い続けてきた。

もっとも老舗は、高齢化などでのれんを畳むのが世の趨勢(すうせい)。令和のこのご時世、新しい看板に巡り合うことは少ない…。が、先日、名古屋でそんな志を持つ新店に巡り合った。

名古屋駅からタクシーで東の方へ数キロ。桜通線高岳駅近くの「焼肉あさひ」にはそうした志が見て取れた。店の内装は比較的簡素だし、店内の空気は煙で白濁することもある、大衆焼き肉店の趣だ。

だが品書きを見てゴクリと喉が鳴ってしまった。正肉の充実が凄まじい。肉はほぼすべて近江牛。それも〝特上カルビ〟〝ザブトン〟など焼き肉店の定番のみでなく、ランプやイチボ、クリミにとうがらしなど好事家垂涎(すいえん)の部位が揃っていて、中には〝かぶり〟などめったにメニューとしては見かけない部位もあるし、個人的な良店の条件である「切り落としミックス」まである。

昨今品薄の牛タンも北海道産の「十勝若牛」のチルドを仕入れている。肉はすべて滋賀の名精肉店「サカエヤ」から。

もちろん近江牛や国産のチルド牛タンは安価での仕入れとはいかない。だが、カットや盛りつけ、品書きのメリハリを工夫して、素性のいい肉を「新しい大衆焼き肉として提案したい」というその意気やよしである。

薄くスライスされた十勝若牛のタンの片面にごく薄い焼き目をつけ、裏返してサッとなでつけたら口に放り込む。

上品な脂と心地いい繊維が口内で躍りながらほどけていく。この清らかな味は、一度も冷凍されていない、若い牛だからこそ味わえる妙味。噛み込むほどにじんわり肉の味が口のなかに広がっていく。

焼き手自身が味を作ることができるのも焼き肉店の魅力のうち。良質な薄切り肉の魅力を再発見したい店が名古屋に登場した。

■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しい。新著「教養としての『焼肉』大全」(扶桑社刊)発売中。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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