Infoseek 楽天

日本の解き方 石破首相が掲げた「アジア版NATO」の非現実度 日米地位協定見直しも含め…まず同盟国助けられない「憲法9条の改正」が先決だ

zakzak by夕刊フジ 2024年10月18日 11時0分

石破茂首相は自民党総裁選の際に掲げた「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の構想について所信表明演説では触れなかった。だが、党内に議論する新組織を設置するよう指示した。アジア版NATOは日本の安全保障に資するのか。現実味のある構想なのか。

石破首相は総裁選で、日米地位協定の見直しにも言及した。

アジア版NATO創設と日米地位協定見直しは、根っこのところで今の日米安保条約と密接に関係しており、さらにその背景には憲法問題がある。そこで、まずは日米安保条約の条文を振り返っておこう。

ポイントは第5条と第6条だ。第5条では「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。第6条では在日米軍の地位について「別個の協定などに規律される」としている。

第5条は「日本国の施政の下にある領域における」と書いてあるので、日本が攻められたときに発動するもので、米国が攻められたときではない。これが「相互」安全保障ではなく、「片務的」安全保障といわれるゆえんだ。これを前提として日米地位協定がある。

一方、NATO条約では、第5条で「締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがって、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によって認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する」とされており、明らかに異なっている。

日米安保条約が「片務的」なのは、日本の憲法9条で交戦権を否定しているからだ。つまり、同盟国が攻撃されたときでも、助けるために交戦できないのだ。要するに、憲法9条を改正しないと、日米安保条約すら「相互的」にできない。ましてアジア版NATO創設や日米地位協定見直しには到底たどり着けないのだ。

逆にいえば、憲法9条を改正し、日米安保条約を「相互的な」ものに改定すれば、ほぼ自動的に日米地位協定も見直せる。日米安保条約を「相互的」なものに改定すれば、その先の将来像としてアジア版NATOもあり得るだろう。

もっとも、アジア版NATOは米国とアジア諸国が安全保障をどのように考えるかに依存するので、日本だけが考えてもできるものではない。こうしてみると、党内でアジア版NATOを議論しても、たいした結論にはならないだろう。他国に話をしても「日本の憲法問題が先だ」と言われ、現実的な政治課題にはならない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

この記事の関連ニュース