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ニュース裏表 有元隆志 「最年少」イメージ武器に戦う〝シン進次郎〟 理想は43歳で大統領になったジョン・F・ケネディ大統領…問題は政策の中身

zakzak by夕刊フジ 2024年8月30日 6時30分

ドナルド・トランプ前米大統領は、安倍晋三元首相のことを親しみを込めて「シンゾー」と呼んだ。同様に、ジョージ・ブッシュ元大統領(子)も現職時代、父親の時代には一時期敵国だった日米が、息子の時代には緊密な関係を築いているとして、小泉純一郎元首相のことをよく演説で取り上げていた。ブッシュ側近の間では、その一節は「コイズミ・パート」と呼ばれていた。

2006年6月、小泉氏とブッシュ氏が連れ立って、テネシー州メンフィスにあるエルビス・プレスリー宅を訪問したときは、その蜜月ぶりがピークに達したともいえる。

米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」研究員として、父親の訪米を間近で見たのが小泉進次郎元環境相だった。政治家の父子の関係は時に微妙だが、進次郎氏は父親を素直に尊敬していた。

その進次郎氏が国会議員となって、19年5月にワシントンを訪れ、CSISで講演した際、「ジョン・F・ケネディ大統領のように、私も日本国民を鼓舞し、すべての改革を実行するため、全力を尽くす覚悟だ」と述べた。進次郎氏の理想は、ブッシュ大統領ではなくケネディ大統領だったのである。

ケネディ氏が大統領に就任したのは43歳の時だった。進次郎氏が自民党総裁選で勝利し、第102代首相に選出されたら43歳6カ月弱となる。ケネディ氏が大統領に就任したのは43歳8カ月弱だったので、進次郎氏の方が若干若いことになる。

何よりも、進次郎氏が首相になると、1885(明治18)年に伊藤博文が44歳で初代首相になった最年少記録を破ることになる(戦後で最も若いのは安倍元首相の52歳)。進次郎氏はこのことを当然意識しているだろう。

進次郎氏は国会議員に初当選した日である8月30日に出馬会見を行う予定だったが、台風10号の影響で9月6日となった。この中で、どのようなメッセージを出すのか注目される。

進次郎氏というと「脱炭素」の印象が強いが、最近は原発を容認する立場に転換する姿勢を示している。環境相時代、2030年度の温室効果ガス排出を46%(13年度比)削減する目標を定めた際、TBS番組で46%とした根拠として、「おぼろげながら浮かんできた」と発言したことが批判された。エネルギー政策を明確に説明してほしい。

進次郎氏の支持派が描くのは、総裁選後直ちに総選挙を行い「進次郎人気」で「政治とカネ」の問題などで支持が落ちた自民党の劣勢を挽回し、勝利するというシナリオだ。

世界の指導者には40代も相次いでおり、自民党が進次郎氏の新鮮さを売りに戦うことはあってもいいが、問題は中身である。国会論戦でボロが出る前に総選挙を終えてしまいたいというのは、身勝手も甚だしい。

総裁選は、進次郎氏を軸に行われるのは確実だが、「最年少」など単なるイメージではなく、エネルギー政策や安全保障政策で日本をいかにかじ取りしていくかを示し、他の候補と議論を戦わせてほしい。「進次郎総裁」と決めつけるのは早すぎる。 (産経新聞特別記者)

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