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「緊縮派か拡大派か」総裁選候補の経済感 安全保障やエネルギー政策と並ぶ重要な争点 世論調査で人気の石破氏「おそらく緊縮派だ」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月21日 15時30分

自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)に、小泉進次郎元環境相(43)が出馬する意向を周囲に伝えた。すでに小林鷹之前経済安保相(49)が出馬を表明したほか、石破茂元幹事長(67)が24日、河野太郎デジタル相(61)も26日の立候補表明に向け調整している。保守層では高市早苗経済安保相(63)の動向も注目される。総裁選で安全保障やエネルギー政策と並ぶ重要な争点となるのは経済政策だ。アベノミクスの金融緩和路線から決別するのか継続するのか。財政政策では緊縮路線か拡大路線かによって、日本経済の行方も大きく左右される。

岸田文雄首相が再選出馬を断念した背景の一つに、日銀の追加利上げを発端にした株価の暴落があった。自民党の次期総裁は事実上、次期首相となるので、各候補が経済政策について、どのような考えを持っているのか確かめておくことは重要だ。

小林氏は総裁選への出馬を正式表明した19日の記者会見で、「経済こそ国力の源泉。経済は財政に優先する。オールジャパンで日本経済を上昇気流に乗せていく」と述べ、重要政策の筆頭に経済を挙げた。地方に大胆に投資し、半導体や航空宇宙産業の〝塊(かたまり)〟を各地に作ると主張、中小企業の利益増大支援や物価高の対策パッケージを打ち出すと主張する。

小林氏は財務省出身だ。同省出身者の政治家は財政健全化重視の緊縮派が多いとされるが、夕刊フジのインタビューでは「今はブレーキを踏むときではなく、財政出動で民間企業が投資し、国民の所得が増えて消費するといった循環になるようにする必要がある」と述べ、財政に関しては「タカ派」ではなく「ハト派」だと強調した。

一方、人気と知名度がある進次郎氏は、環境相として環境問題に取り組んだほか、農業改革や社会保障改革などにも携わったが、経済政策の方針については未知数の部分も大きい。

上武大学の田中秀臣教授(日本経済論、経済思想史)は「進次郎氏が総裁選で勝ち、政権が発足した場合、誰が後ろ盾になるかが注目だ。(父の)純一郎政権は財務省の影響力が強かった。当時の人脈を使うと財務省のコントロールに置かれかねない。ただし、菅義偉前首相がバックにつけば変わることもありえる」との見方を示す。

総裁選では茂木敏充幹事長(68)、上川陽子外相(71)、斎藤健経産相(65)、林芳正官房長官(63)、加藤勝信元官房長官(68)、野田聖子元総務相(63)らの名前も出ている。

「ポスト岸田」候補からは日銀の金融政策について注目すべき発言が相次いでいる。

日銀が追加利上げを決定する前の7月22日、茂木氏は「日銀は段階的な利上げの検討も含めて、金融政策を正常化する方針を明確に打ち出すことが必要だ」と述べた。

河野氏も海外メディアの取材に、円安対策としての利上げに言及したと報じられた。

前出の田中教授は「経済状況が十分に回復しない段階で利上げを要請するのは『緊縮』の表れだ。特に幹事長の茂木氏が党の顔として利上げを主張したことは日銀にとって〝応援団〟となったが、経済政策のセンスを感じない」と指摘する。

世論調査で人気の高い石破氏はどんな経済観を持っているのか。今月7日に報じられたロイター通信のインタビューで、「金融緩和という基本的な政策を変えないなかで徐々に金利のある世界を実現していくのは正しい政策だ」と日銀の利上げを評価した。アベノミクスの金融緩和については2018年の総裁選当時、「効果を上げたが、カンフル剤がいつまでも続くわけではない」と述べた。

田中教授は「安倍晋三元首相に政治的に対抗する意図だけではなく、過去の発言を見る限り、茂木氏や河野氏と同様、本音はおそらく緊縮派だ。現実に首相就任の可能性もあるので要警戒だ」と話す。

「緊縮派」や「円安否定派」が目立つなか、高市氏は自身が主宰する勉強会にアベノミクスの指南役、本田悦朗元内閣官房参与を講師に招いた。円安についても「海外から国内に生産拠点を移そうと考える企業が増えてきた」とメリットを強調、大規模金融緩和の継続を訴えるなどアベノミクスを踏襲する姿勢を示したこともある。

田中教授は高市氏について「推薦人の確保や、非主流派の支持を集められるかが課題だが、経済政策では最も期待できる。首相に就任した場合、安倍政権の教訓を生かし、官邸周辺の『財務省外し』に取り組むのも一手だろう」と語る。

9月には立憲民主党の代表選も行われる。田中教授は「政府の責任を追及している立憲民主党こそ利上げを肯定してきた。こうした主張では国民からは信用されない」と疑問を呈した。

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