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トップ直撃 全世代にワイン文化を〝醸造〟 「キリングループ」メルシャン・大塚正光社長 消費数量は40年間で8倍に伸長

zakzak by夕刊フジ 2024年8月27日 11時0分

Z世代の20代の若者の間でワインへの関心が高まっている。「おしゃれ」「贅沢な気分を味わいたい」というのがその理由だ。キリングループでワインを中心に酒類を手掛けるメルシャンの大塚正光社長(54)は、40~60代のワインを熟知する層から、ワインの入り口の人までを対象に「多様な層に、多様なワインを味わっていただきたい。そのためのさまざまな飲み方を提案していきたい」と話す。

――ワインの消費数量が伸びています

「赤ワイン人気による第6次ワインブーム(1997~98年)、チリを中心とした新世界ワインや『日本ワイン』の人気が高まった第7次ブーム(2012年ごろ)を経て、日本のワインの消費数量は40年間で約8倍に伸長しています。最近は、健康志向の高まりから、低アルコールワインやノンアルコールワインへの関心が高まり、多様な暮らし、食生活に合わせてワインを味わっていただいています」

――11月に新酒を2種類発売します

「『シャトー・メルシャン 日本の新酒 甲州&シャルドネ』は、飲みごたえのある山梨県産甲州産と華やかな香りの福島県産シャルドネをブレンドしました。『日本のあわ 新酒 2024』は日本のブドウを100%使用したスパークリングワインです。日本ワインの新酒市場では約99%が炭酸ガスを含まないスティルワインです。スパークリングワインの新酒を味わっていただきたいと思います」

――ボトル缶のスパークリングワインが話題に

「8月27日から、アルコール度3%の『甘熟ぶどうのおいしいワイン スパークリング』を発売します。アルコール度数は3度で、『ワインは、翌日のことを考えると控えてしまう』というライトユーザーをターゲットにしています。ボトル缶(290ミリリットル)なので、『1本は飲めないけれど、飲みきりサイズで手軽に楽しみたい』という方にもお勧めです」

――ノンアルコールスパークリングワインも発売されます

「アルコール0・00%の『贅沢(ぜいたく)ワイン気分 スパークリング白/ロゼ』(ボトル缶)を9月3日から新発売します。休肝日を習慣としたり、あえてノンアルコールを選んだりするお客さまが増え、ノンアルコールワインは直近5年間で約4倍と市場が拡大しています。30~40代の女性や、変化を求めているノンアルコールユーザーに贅沢感を味わっていただき、自分へのご褒美として飲んでいただきたいと思います」

飲食店回りが仕事の原点

――キリンビール時代は、街の飲食店全店をキリンに切り替えた経験も

「姫路支店時代、飲食店を回っていると競合の取扱店が増え始めたことに気付きました。飲食店に聞くと、来店客の指名とのことでした。『卸、酒販店をフォローしておけば』というこれまでの考え方を改め、繁華街の取扱店を徹底的に回り、飲食店のほぼ全店にキリンを置いてもらいました。この時の多くの関係者を巻き込んで達成できた経験が仕事のベースになっています」

――中国では経営立て直しに尽力しました

「麒麟(中国)投資有限公司時代、長江エリアの中国オリジナルブランド『沁麒麟』が伸びず、業績不振に陥りました。そこで、『一番搾り』ブランド集中戦略を図り、事務所を中心部から離れたところに移して固定費やコスト削減を実施し、3年かかるところを1年で黒字化しました」

――キリングループのファンケルでは新たな仕組みづくりを

「部内の課題抽出や課題解決のため、ファンケルのやり方をさらに良くするためにキリンのやり方を融合していくように提案しました。例えば海外事業部では、国別・業種別のPL(損益)管理を作成し、どこで売り上げや利益を稼いでいるかということを可視化、効率的投資に気付く仕組みを作りました」

――社員への思いをお聞かせください

「現場に行かなければ分からないことはたくさんあります。積極的にワイナリーをはじめ全国の事業所に出向いて、『今、頑張っていること』などを聞き社員を後押ししていきたいと思っています」

チリで見た広大なワイナリーに感動

【ワイン】高校時代は野球部。大学ではスキー部でアルペンスキー選手として活躍し、社会人となってからは取引先などを歩き回ることで体を鍛えた。キリンビール入社後は神戸支社でワインのマーケティングを担当した。「ワインにはこの頃から縁があったのかもしれません」

【世界のワイナリー】6月にパリ、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、南フランス、ボルドー、スペイン、チリ、アルゼンチン、サンフランシスコにあるワイナリーの視察に出かけた。約10日間で回る強行軍だったが、広大な敷地に広がるぶどう畑を見て感動した。「チリのワイナリー『コンチャ・イ・トロ』は9000ヘクタール以上の畑でブドウ品種ごとに最適な畑を選択し生産するなど、勉強になりました」

【家族】妻、大学生の娘と息子の4人家族。娘と息子は中国赴任当時、大連の地元の小学校や、上海のインターナショナルスクールに通い、中国語、英語、日本語を流暢(りゅうちょう)に話す。帰国後、大学で勉学に励む。「2人とも国際関連の学部に進学し、楽しい学生生活を送っています」

【単身赴任】妻、娘、息子は大阪市内に在住している。単身生活はどうしてもお酒のつまみ風になるが料理を作るのは大好きだという。今、凝っているのは、ミョウガとオクラを刻み、浅漬けの素を混ぜた漬物。「さっぱりしておいしく、人に会うたびに勧めています」

【ゴルフ】中国・深圳ではゴルフを楽しんだ。早朝1人でプレーしてから出社。仕事を終え、夕方から取引先など仕事関係のメンバーとよくプレーした。現在は、上海時代に知り合った、日本の企業の仲間を中心に週に1回はプレーする。「思い出話をしながら楽しく回っています」

【グルメ】おいしいものに目がない。今、はまっているのは、福井県の郷土料理とおそばを出すお店。地元の日本酒「黒龍」なども置いている。都内に数件あり、気が向いたときに仲間と出かける。「中華料理、イタリアンも大好きです」

【好きな言葉】《一簣之功(いっきのこう)》。中国最古の歴史書「書経(しょきょう)」にある教え。仕事をやり遂げるための、最後のひと踏ん張りのこと。「座右の銘として大事にしている考え方ですが、そこにこだわり過ぎず、いろいろな人の意見を取り入れるなど、目標に向かって最後の力を振り絞ることが大切だと思っています」

【会社メモ】ワインを中心に酒類の製造・販売を手掛ける。本社・東京。1934年設立。2010年12月、キリンホールディングスの100%子会社となる。勝沼(山梨県甲州市)、桔梗ヶ原(長野県塩尻市)、椀子(まりこ、同上田市)に「シャトー・メルシャン」のワイナリーがあり、シャトー・メルシャン椀子ワイナリーは、「ワールド・ベスト・ヴィンヤード2023」で世界38位および「ザ・ベスト・ヴィンヤード・イン・アジア」に選出された。23年12月期の売上高559億円。従業員数660人(23年12月時点)。

■大塚正光(おおつか・まさみつ) 1969年12月生まれ、54歳。大阪市出身。93年法政大学経済学部卒、キリンビール入社。2001年広域販売部担当部長。05年上海・復旦大学留学。15年キリンホールディングス経営企画部主幹。18年華潤怡宝飲料(中国)投資有限公司取締役。22年ファンケル海外事業部本部海外事業部付部長。23年同本部海外オフィス統括室部長兼芳珂(上海)貿易有限公司管理本部本部長。24年3月メルシャン代表取締役社長に就任する。

(ペン/山本ヒロ子(危機管理・広報コンサルタント) カメラ/安元雄太)

チリのワインメーカー、コンチャ・イ・トロの幹部らと(左から3人目、本人提供)

仲間とゴルフを楽しむ(右から3人目、本人提供)

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