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ニュース裏表 有元隆志 台湾海峡危機政策シミュレーション 時代の変化の速さは想定以上 「事態認定」めぐり法整備の必要性浮き彫り

zakzak by夕刊フジ 2024年7月19日 6時30分

小林鷹之氏も参加

有事の際の日本政府の対応を模擬演習する「台湾海峡危機政策シミュレーション」(一般社団法人『日本戦略研究フォーラム』主催)が13、14の両日に行われた。私はメディア役として、日本だけでなく米国、中国、ロシアメディアの立場を使い分けて、演習会場内で情報を発信した。

このシミュレーションは初回から4年連続して参加しているが、大きく変わった。まず、自民党の中でも安全保障分野に精通している議員の参加が多くなった。

小野寺五典元防衛相を首相役に、50音順で大塚拓▽尾崎正直▽神田潤一▽小林鷹之▽小森卓郎▽鈴木英敬▽鈴木馨祐▽長島昭久▽細野豪志▽松川るい▽山下貴司▽和田義明―という13人の国会議員が参加した。

中でも、小林氏は9月の自民党総裁選への出馬が取り沙汰されており、メディアの注目度も高かった。初参加ということもあり、「割り当てられた経産相役にどこまでなり切ればいいか慣れない」と言いながらも、経産事務次官役の小宮義則元特許庁長官のアドバイスを受けながら、後半になると発言機会も増えた。

米大統領役のケビン・メア元国務省日本部長も「『日本政府』の考え方が現実的になった。この内閣なら安心できる」と太鼓判を押した。

宇宙、サイバー、電磁波(ウサデン=頭文字による略称)の新しい領域は、4年前と比べてはるかに重要な位置を占めるようになった。偽情報もSNS上を通じて流布されるようになった。メディア担当にも関わることで、今回はあえてフェイクニュースを流すことにした。

初回から変わらないこともある。それは事態認定をめぐる、わずらわしさである。事態認定とは武力攻撃事態、武力攻撃予測事態、または、緊急対処事態であることを政府が認定することを言う。毎回、どの事態にあるか認定するのに時間がかかる。

事態認定をすると中国を刺激することになり、邦人保護などに影響が出ると言って政府が躊躇(ちゅうちょ)する場面が過去の議論で何度もみられた。今回は比較的順調に認定が進められたが、参加者からは「安全保障関連法制の見直しに着手することが必要だ」との声が相次いだ。

これまで事態認定を含んだ法整備を行ったのは小泉純一郎、安倍晋三の両政権時代だったことから、よほど強固な政権基盤を持たないと着手するのは難しいとの指摘もある。

ただ、時代の変化の速さは想定以上で、いまの法制度はそれに追いついていないこともシミュレーションを通じて浮き彫りとなった。

そして、自衛隊の存在すら明記されていない憲法が根本問題として横たわる。

本来、国会を通じて政治家がすべき議論とは、「直面する危機にいかに対応するか」であって、「政治とカネ」をめぐる問題に終始している余裕などないはずだ。

総裁選では今回活発に行われた議論のように、日本が直面する課題に「自分ならいかに立ち向かうか」を明らかにしてほしい。そのためにも、小林氏には積極的に声を上げることを期待したい。 (産経新聞特別記者・有元隆志)

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