24日閉会の臨時国会も「政治とカネ」に終始した。こんなことを1年以上も続けている。
思えば、昨年の12月、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、自民党の派閥パーティー収入の一部が所属議員に還流され、政治資金収支報告書に不記載になっていると報じた。
このときはまだ「不記載問題」と呼ばれたが、これを後追いし、「裏金問題」と名付けたのが朝日新聞だった。
「裏金」というネーミングは、政治家が何かやましい金をもらっているかのように印象付けた。テレビのワイドショーは「裏金」のネーミングをなぞって、悪い印象を増幅させた。朝日新聞は一連の「裏金問題」報道でめでたく日本新聞協会賞を受賞した。
臨時国会の最終盤では、衆参両院の政治倫理審査会で通常国会での出席に応じなかった旧安倍派40人、二階派2人の計42人の弁明が行われた。何も新しい事実は出てこなかったが、いまなお、まるで犯罪者扱いだ。
だが、この問題はすでに今年1月には決着が付いている。
東京地検特捜部が100人体制で捜査した結果、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者が在宅起訴や略式起訴、不記載額の大きかった国会議員3人と秘書が逮捕や在宅起訴、略式起訴、二階俊博衆院議員(当時)の秘書が略式起訴され、その後、有罪となったが、これで終わった問題であるはずだ。その他の議員は嫌疑なしだった。
しかし、問題のさばき方を岸田文雄首相(当時)が間違った。唐突に「派閥の解消」を宣言したり、自ら政倫審に出席したりとマスコミ世論に圧されて場当たり的に対応した。火に油を注ぎ、延焼させた。9月に控える自民党総裁選での再選に利用しようとした節もある。
結局、処理のつたなさも響いて内閣支持率が低迷し、総裁選不出馬となった。後継総裁に選んだ石破茂氏の無能ぶりもあって、10月の衆院選では自公与党は大敗し、連立政権は衆院で過半数を割り込む少数与党に転落した。
野党や左派メディアは、この問題をさらに長引かせたい。年を越し、来年夏の東京都議選と参院選まで長引かせ、自公を参院でも過半数割れに追い込みたいと考えている。
朝日新聞は今回の政倫審を「幕引きの儀式ではない」とし、「証人喚問や参考人招致といった形で、改めて安倍派の幹部らに説明を求め、実態に迫るのが国会の役割だ」(12月19日付社説)と煽っている。
本来はそれほど大きな問題でもないのに、大きく仕立てることで権力闘争に利用されている。石破首相の存在感のなさがそれを増幅している。
■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。