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ニュース裏表 安積明子 真の〝キングメーカー〟たる条件とは 一歩リードの菅義偉氏とチャンス探る麻生太郎氏、総裁選の背景に浮かぶつばぜり合い

zakzak by夕刊フジ 2024年9月11日 6時30分

3年前の自民党総裁選では、岸田文雄首相に迫る勢いがあった河野太郎デジタル相が、今回はすっかり埋没している。前回は河野氏を応援した国会議員のうち、かなりの数が離れてしまったことが原因だろう。

河野氏が属する麻生派を率いる麻生太郎副総裁は一応、河野氏を支援しているが、派で一致結束して推そうとしているわけではないようだ。

例えば、麻生派で参院栃木選挙区選出の高橋克法参院議員が明かした、こんなやり取りが、関心を集めている。

高橋氏が茂木敏充幹事長の支援を決め、麻生氏に伝えると「お前の選択は間違っていない」と言われたそうだ。また、「総裁選は人気投票になっては絶対にいかん。国の将来を間違える」と語ったという。

これは、一歩リードが伝わる小泉進次郎元環境相へのあてこすりか。確かに、党内では「勝ち馬に乗ろう」と小泉氏支持に動く議員がいる一方で、躊躇(ちゅうちょ)する動きもある。

懸念の訳はいくつかある。

小泉氏は6日の出馬会見で、できるだけ早期の衆院解散を表明したが、「たとえ衆院選で勝っても、来年夏の参院選はどうか」「来年の通常国会を乗り切れるのか」との声は小さくない。

麻生氏の念頭には、立憲民主党代表選に出馬した野田佳彦元首相や枝野幸男前代表の存在も浮かぶようだ。前述の高橋氏との会話では、こんなやり取りもあったという。

「(次期代表に)野田がくるにしても、枝野がくるにしても大変な論戦をしなければならない。そのときに自民党を代表して、しっかり論戦ができる候補なのは誰なのか」

もっとも、これは小泉氏の背後にいる菅義偉前首相への対抗心でもあるだろう。もし、小泉氏が勝利すればキングメーカーの地位は菅氏の手に転がり込む。簡単な敗北は許されないのだ。

麻生氏は今、「先の先」まで情勢を読み、チャンスを探ろうとしているのではないか。河野氏の支持を表明した今回は、麻生氏にとってしばしの「静観タイム」に違いない。

ところで、麻生、菅両氏には共通点がある。麻生政権は365日、菅政権は384日といずれも短期政権だった。

いまだに永田町で存在感がある森喜朗元首相も在任期間388日だった。だが、自身が率いた清和政策研究会の小泉純一郎元首相を後継とし、福田康夫元首相、安倍晋三元首相と4代連続で総理総裁を清和会から輩出して、支配力の礎を築いた。

麻生氏や菅氏が、同じことをやろうと考えても不思議ではない。ただ、麻生氏の持ち駒にはいまいち勢いがない。菅氏の持ち駒も「耐久性」に欠ける恐れがあるようだ。

真の〝キングメーカー〟になることは、総裁選で勝利するよりはるかに厳しそうだ。 (政治ジャーナリスト)

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