正月休みが明けた週末の映画動員ランキング(1月10~12日、興行通信社調べ)は、1位から順に「グランメゾン・パリ」「はたらく細胞」「劇映画 孤独のグルメ」と邦画が独占。1、3位は「食べる」作品、2位も体内の細胞を擬人化して飲食や腸活も登場する「食」つながり。国際情勢がキナ臭いからこそ、大地の恵みをありがたく血肉にする尊さに共感が広がっているのか。
「グランメゾン・パリ」では、フランス料理のシェフ・尾花夏樹(木村拓哉)や早見倫子(鈴木京香)らが、本場パリでアジア人初のミシュラン三つ星を目指す。道は険しいほど、チーム内の葛藤や結束に生まれ、スポ根的な展開のドラマはわかりやすい。だが、本作の妙味はキャスティングもさることながら、珠玉の料理の一皿ひとさら自体が匂い立つようなカメラワークで、巧みに美しく目に訴えかける場面にある。
最高の素材を入手する苦労や、手を加えすぎない調理法で、どうグルメをうならせる特長を出すか。「ラストマイル」で物流の荷物一つひとつに人々の喜怒哀楽を投影した塚原あゆ子監督が、今度は、食べ物に魂を吹き込んだ。
尾花シェフとタッグを組むパティシエ役の2PMのオク・テギョンら、多国籍軍のスタッフが、フランス料理の巨匠を前に、至高の料理を披露するラストは腹がグーグー鳴りっぱなし。その最終盤、フランス人シェフに、「和の匂い」が漂うセリフを吐かせ、全体の伏線を回収してみせる。ニヤリとした。
木村拓哉のブレない、デレない演技にも注目