韓国政界がさらに混迷を深めている。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が19日、「非常戒厳」宣言を巡る内乱首謀容疑で逮捕された。現職大統領の逮捕は初めて。尹氏は取り調べに応じず、徹底抗戦の構えだ。尹氏の一部支持者は逮捕状を出したソウル西部地裁に乱入、破壊活動を繰り広げるなど暴徒化した。
尹氏はソウル近郊のソウル拘置所に正式に収容された。退任後に逮捕された朴槿恵(パク・クネ)、李明博(イ・ミョンバク)両元大統領と同様の10平方メートル程度の個室に入った。収容者用制服を着用、「マグショット」と呼ばれる収容記録簿用の人物写真を撮影したとみられる。
19日には逮捕に激高した尹氏の支持者ら数百人は警察官から奪った盾やいすでガラスの扉や窓を割るなどして地裁の建物内に乱入。壁やテレビ、ATM(現金自動預払機)などが壊された。18日に地裁内に侵入しようとして拘束された人を合わせ、計86人が身柄拘束されたという。
尹氏は捜査機関や裁判所の判断は不当だと主張している。世論調査会社「韓国ギャラップ」が17日に公表した調査結果では、与党「国民の力」の支持率が約5カ月ぶりに最大野党「共に民主党」を上回った。尹氏の主張が保守層に響いているとみられる。
聯合ニュースによると、尹大統領は2月に起訴された場合、1審判決は8月にも出る見通しだ。一方、憲法裁判所による弾劾審判は4月中旬までに結論が出るとの観測がある。尹氏が罷免された場合、大統領選が行われるが、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は公選法違反で有罪判決を受けている。年前半にも最高裁判決が出るとみられ、有罪が確定すれば選挙に出られなくなる。