今年もいろんなことがありました。思うところもいくつかあるので振り返ってみます。
先日のアメリカ大統領選、結局勝ったのはトランプだったね。言われているのは、移民とかマイノリティーとされる人の多くが彼に投票したんだろうってこと。長年虐げられ苦しい生活を強いられてきた彼らだけど、バイデンを引き継ぐ形のハリスではおそらくこれまでと何も変わらないだろう。だからトランプがどれだけ自分たちのことをひどく言っていようが、差別的な目で見ていようが、自分たちの環境を少しでも変えてくれる可能性があるなら、そちらに投票しようということだったんでしょうね。「仕方ないから」という思いで。
日本の政治を見ても、例えばわれわれ喫煙者からすると、「税金が足らなくなったらたばこで取ればいいだろう」という体質がいつまでも変わらないのは本当に困ったものだと思います。だから選挙の時は、どうせロクな奴はいないけどこれまでと少しは状況を変えてくれそうな人を選ぼうかとなる。仕方ないから。たばこといえば、「俺は紙巻きたばこしか吸わない。これがうまいんだよ」と言い続けてきた私もついに加熱式たばこに変えました。だって紙巻きはどこへ行っても吸える場所がない。仕方ないから変えました。
こういうふうに、いろんなことで「仕方ないから」と思わなければならない世の中ってどうなんだろう。何かちょっと寂しいよね。今年の春から新幹線も全面禁煙になったし、日本を代表するような大企業も社内で吸えるところがなくなっているといいます。それと、私のように加熱式たばこに変える人が増えても、たばこを吸うことを嫌う人はどこへ行っても一向に減らない。「嫌いなら近づかなければいいだけだろう。こちらは好きで吸ってるんだ。何が悪いか説明してみろよ」って言いたい。そのように批判するやつらの大半は、ものごとの本質を見極めることなく面白おかしく弱い者いじめをしているだけなんだと思うけど。
今年は私も含め多くの人が大谷翔平選手の活躍にワクワクさせられたと思います。そんなスーパースターでも誹謗中傷はある。特にアメリカなんて人種差別が当たり前の国だから、日本人選手を良く思わないということもあるのでしょう。でもそのほとんどは何の根拠もないものばかり。SNSか何かで好き勝手に言ってるだけ。喫煙者に対する批判と似ていますよね。人間だから好き嫌いがあるのはわかるけど、嫌いなら嫌いでいいので、近づいてくるなよ。黙ってろ。
私もこれまで、どさまわりの役者とか三文役者とかいろんな言われ方をしてきました。でも今では、自慢じゃないけどこの間の明治座の舞台だって何だって連日大入り満員です。だからって世間様に認めてもらったと思っているわけではないですよ。いろいろ言われてきたことを糧にがんばらせていただいています。
■梅沢富美男(うめざわ・とみお) 福島県生まれ。大衆演劇「梅沢劇団」第3代座長。1歳5カ月で初舞台を踏み、20代半ばで演じた女形が「下町の玉三郎」と話題に。1982年には小椋佳作詞作曲の『夢芝居』が大ヒット。テレビ番組のコメンテーターや俳人としても活躍している。