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経営者目線 日銀利上げでも「長期円安トレンド」は変わらず ワタミ酷暑で「夏宴会」好調

zakzak by夕刊フジ 2024年8月7日 6時30分

日銀は7月31日の金融政策決定会合で、政策金利を0・25%程度にする利上げを決めた。「金利のある世界へ」と大きく報じられているが、0・1%が0・25%になっただけで「誤差」というのが私の印象だ。

ニッポン放送の番組で、朝日新聞編集委員の原真人さんと意見交換した。植田和男総裁の記者会見も取材した原さんは「一応やる気をみせたが、ものすごくわずかな利上げだ。最終的ゴールはもっと高い金利とうかがわせる言いぶりだった」という。

この利上げで、今のインフレに歯止めがかかるとは思わない。一時的に円高にふれたが、原さんは「大きな円安トレンドは変わらない。年初の為替相場は1ドル=140円程度で、ほとんどのエコノミストや、企業経営者は今年は1ドル=130円台になると予想していた。まだ超円安で、世界からみたら弱い通貨であることに変わりはない」という。参議院議員の藤巻健史さんなどは、「絶好のドルの買い場だ。将来的に円は紙くずになるのだから、160円も150円も大差はない」と、政策決定会合にコメントしている。

そして日銀は今回、国債購入額を2026年1~3月までに、月3兆円程度に半減することも発表した。しかし原さんは「2年後に日銀の国債保有残高を7―8%減らす程度で、実はたいしたことがない」と指摘する。

7月30日付の日本経済新聞朝刊は、財務省は買い手を確保するため、国内外の証券12社と協力して政府系ファンドなど海外投資家向けの広報を強化すると報じた。国債をマーケットに委ねれば、長期金利が上昇しかねない。

原さんは「1%金利が上がると数兆円レベルで政府の予算(国債利払い費)が増える」。さらに「1%金利が上がると5兆円の日銀の支払金利額が増える。2%で10兆円。日銀の自己資本は10兆円超であり、債務超過は現実的なリスクだと思っている」「日銀は今後、少しずつ、ゆっくり金利を上げていくしか活路がない」という。

日米金利差が意識されているが、大きく縮まることはない。それより日銀の債務超過が意識されれば、円は信用を失い、円の大暴落はいつ起こってもおかしくない。

実質賃金が上がらない中で、住宅ローン金利の負担が増えていけば、家計のひもも今まで以上に固くなるだろう。

そうした中でも足元、単身世帯や若者の需要は比較的堅調だ。連日の酷暑で生ビールを求めるお客さんで居酒屋も好調だ。ワタミの「夏宴会」もたくさんの予約をいただいている。

宴会メニューは、一つ一つ、お客さまが食べたいものをそろえ、価値を意識した。鳥メロでは、若者向けに陶板焼きのお肉とチーズを「倍盛り」するコースも用意した。3日前までの予約で、プレミアムモルツ飲み放題もかなりお得だ。俯瞰(ふかん)してみれば今は、コロナ渦が終わり、財政破綻が起きるまでのつかの間の宴の時期かもしれない。来年の夏は、財政経済が今年より「酷暑」となることは間違いない。 (ワタミ代表取締役会長兼社長CEO・渡邉美樹)

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