米ドナルド・トランプ政権が発足した。2期目なので「トランプ2・0」で、「3・0」はないので、残り4年が勝負だ。
もっとも2年後には中間選挙もある。それまでに成果が出ないと、それ以降はレームダック(死に体)になるので、実質2年間の勝負だ。なので、矢継ぎ早に外交方針や大統領令を出しているのだろう。
早速、トランプ大統領は20日、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱すると発表した。就任演説で「エネルギー非常事態を宣言する」と表明し、公約どおりに石油などの掘削を進める考えを表明した。米国は第1次トランプ政権でパリ協定から離脱したが、2021年、ジョー・バイデン前大統領の就任初日に復帰した。それから4年後、トランプ大統領は、やはり就任初日に再離脱の公約を実行した。
「安全保障のためにグリーンランドを買いたい」「パナマ運河を取り返したい」とも発言している。これらをトンデモ発言とする向きがメディアにあるが、米国史からみれば驚くことでもない。
ルイジアナはフランス、フロリダはスペイン、カリフォルニアはメキシコ、アラスカはロシアから買っており、グリーンランドも1946年にハリー・トルーマン元大統領が購入をもちかけた経緯がある。少なくとも、武力で奪うロシアや〝債務の罠〟でせしめようとする中国よりは、買う米国の方がまともだともいえる。
一般的に民主党と共和党は対内・対外政策のアプローチに違いがある。
民主党は対内的に「大きな政府」で、外交より国内問題を優先しがちだ。外交では国際協調や人道的介入を重視し理念的だ。
一方、共和党は対内的に「小さな政府」で国内問題では規制を重視しない傾向がある。その分外交に目が行き、国益や安全保障を重視し実利的だ。
早速、中東ガザ地区での停戦の実現やウクライナでの停戦機運が出てきている。
対中国政策では、関税を引き上げるとしつつ、習近平国家主席を就任式に招待(実際には欠席)したり、トランプ大統領による早期訪中を模索したりと、トランプ氏主導で進んでいる。こうなると、習政権としても、うかつに「台湾統一」の気配も見せられない。
民主党が「理念による平和」を追求するのに対し、共和党は「力による平和」といわれるが、まさに対照的になっている。
1期目と2期目で外交方針に大きな差はないが、1期目では閣僚やスタッフとの意見相違が顕在化し、辞任する事態も相次いだ。2期目の閣僚スタッフはトランプ氏の意見を十分に承知済みだ。
日本にとっては、なんといっても安倍晋三元首相がいないのが痛い。妻の昭恵さんがお膳立てした米大統領就任式前のトランプ氏との会談もやらなかった。
チャンスを逃して後手後手になっており、日本の存在感は日に日になくなっている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)