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肉道場入門! カツとキャベツとビーフカレーライスを一皿に 郷土食〝金沢洋食〟のひとつの形 1960年代に誕生「金沢カレー」

zakzak by夕刊フジ 2024年7月23日 6時30分

★絶品必食編

ソースのかかったカツの脇に、せん切りキャベツがある。色の濃いビーフ味のカレーソースがあり、その下には見えないライスもある。

それが金沢カレーだ。一般に北陸エリアでは洋食、とりわけカレーが好まれるが、金沢カレーにはカツが乗り、ソースがかかっている。

定番はザクザクッとカットされたロースカツ。その他、チキンカツやヒレカツなどが鎮座する。ウインナーやオムレツなどが乗るケースもあるが、基本はあくまでもカツなのだ。

1960年代に

金沢カレーの起こりは1960年代のこと。それ以前に金沢市内の洋食店「レストランニューカナザワ」に務めたシェフたちが石川県内で続々と独立し、カレーをメニューの柱に据えた洋食店を開業させる。『洋食タナカ』(現『チャンピオンカレー』)、『インデアンカレー』、『キッチンユキ』などなど。

俗に〝外食元年〟と言われる1970年を待たずして、金沢には外食の灯が点ったのだ。

70年代に入っても、『カレーの市民アルパ』『ターバンカレー』など、現在も金沢カレーの名店と言われる店舗が次々に創業し、金沢カレーの礎は作られた。

冒頭に書いたように、舟形の金属製の皿に乗ったカツはカレーの具としての立ち位置だけでなく、おかずとしての主張も強い。なにしろカツにはすでにソースがかかっていて脇にキャベツが添えられている。いうなれば単品のとんかつとビーフ味のカレーライスが一皿盛りになっているのだ。

金沢には〝ハントンライス〟という名物料理がある。オムライスに白身魚などのフライを乗せ、その上からケチャップやタルタルソースをかける、いわゆる〝金沢洋食〟の代表格だ。

金沢カレーは、全国にあまたあるカレーライスの一様式とみなされることが多いかもしれないが、一皿に複数の洋食を盛ったメニューという特徴から考えると、金沢カレーは〝金沢洋食〟として捉えるべき、郷土食のひとつの形なのだ。

全国に展開する「ゴーゴーカレー」だけではない。本場に赴き、それぞれの味の違いを楽しむ。旅に出てこそ味わえるカツの乗った金沢カレーがある。 (火曜日掲載)

■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しい。新著「教養としての『焼肉』大全」(扶桑社刊)発売中。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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