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舟木一夫 出会いと別れの80年 作曲家・遠藤実さん「これならどうだ?」 舟木一夫に暑い8月に新しい詰め襟「若い頃から妙に相性が良かった」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月31日 10時0分

作曲家の遠藤実は作詞家・丘灯至夫の書いた「高校三年生」の歌詞を読んだ途端、詰め襟に金ボタンを付けて中学に進学する同級生を寂しく見送った〝あの日〟の自身の姿が浮かんだという。

遠藤は東京・向島の貧しい家庭に生まれ、戦時中に両親の故郷・新潟県内野町(現新潟市西区)に疎開。尋常高等小学校を卒業した後、職業を転々とし、17歳で上京。

流しをした後、作曲家の道に入り、藤島桓夫、島倉千代子、こまどり姉妹、北原謙二らの歌をヒットさせた。

そんな流れの中で1963年に「高校三年生」に出合った。

丘の歌詞を何度も読み返し、夕方の美しい風景を思いながら、ワルツの曲を書いた。舟木一夫(当時は上田成幸)らがあいさつに来る直前に再度ピアノで弾いてみた。

若い頃から妙に相性が良かった

翌年には東京オリンピックもあるからもっと元気な曲調のほうがいい。10分あまりでマーチ風の曲に作り替え、同時にあのリズミカルなイントロも完成させた。

3曲目の「学園広場」の発売前にも、舟木は遠藤宅を訪ね、遠藤のピアノに合わせて歌った。

1コーラス目の終わりごろから違和感を覚え、歌うのを止めた。2人の間で「何か変か?」「変です」といった会話が続いたという。

遠藤は「ちょっと待ってくれ」と言って、2階に上がった。舟木は、夫人の節子が出してくれたカステラを食べながら待っていると、「これならどうだ?」。

4分の4のマイナーが4分の3のメジャーに切り替わっていたのだ。

「高校三年生」のヒット以来、舟木はしばらく自前の詰め襟を着ていたが、暑い8月になって遠藤は新しい詰め襟1着を作ってくれた。

還暦の「赤ツメコンサート」の際は赤の詰め襟1着をプレゼントされている。

「若い頃から先生とは妙に相性が良かった」という舟木は、遠藤の七回忌にあたる2014年、東京・新橋演舞場などで「遠藤実スペシャル~決して散らない花々」と題したコンサートを開いたほどだった。 =敬称略 (大倉明)

■舟木一夫(ふなき・かずお)歌手。1944年12月12日生まれ、79歳。愛知県出身。63年6月、「高校三年生」でデビュー。橋幸夫、西郷輝彦とともに〝御三家〟と呼ばれ、人気を集めた。歌手だけでなく、ドラマや映画などで活躍してきた。ツアー「コンサート2024」を開催中で、10月22日に大阪・フェスティバルホール、同月23日に神戸国際会館・こくさいホール、11月6日に東京・渋谷の「LINE CUBE SHIBUYA」(渋谷公会堂)を予定している。

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