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米大統領選 バイデン氏が撤退表明、後継にハリス氏を指名…トランプ氏「負かしやすい」発言も 「確トラ」で岸田政権は役割終えるのか

zakzak by夕刊フジ 2024年7月22日 11時22分

ジョー・バイデン米大統領は21日午後(日本時間22日未明)、X(旧ツイッター)で11月の大統領選への出馬を取りやめ、後任の民主党候補としてカマラ・ハリス副大統領(59)を支持する考えを表明した。先月のテレビ討論会で再燃した高齢不安から、民主党内で「撤退圧力」が強まっていた。衝撃的な暗殺未遂事件を受け、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が存在感を高めており、国際社会や市場は「トランプ氏復活」を見据えた動きを見せている。民主党は来月19日開幕の党大会で、トランプ氏に対抗できる候補を指名できるのか。識者からは、岸田文雄政権とバイデン政権との距離の近さを危ぶむ声が上がっている。

目ぼしい実績ないハリス氏 支持率は伸び悩み

「残りの任期で大統領としての責務にすべてのエネルギーを注ぎ込むため、(民主党の)候補者指名を受諾しないことを決定した」

「私はカマラ(・ハリス副大統領)が党の候補者になることを全面的に支持し、推薦したいと思います。民主党の皆さん、今こそ団結してトランプを倒すときです」

バイデン氏はXで、大統領選撤退の意思をこう明かし、ハリス氏への支持を呼び掛けた。

後継指名を受けたハリス氏は立候補を表明する声明を出し、トランプ氏に勝利するため「全力を尽くす」と訴え、「民主党の団結」に向けて取り組むことを誓った。

再選を目指した現職大統領が撤退に追い込まれるのは、ベトナム戦争の反対運動に直面した1968年3月のリンドン・ジョンソン大統領(当時)以来56年ぶりとなるが、当時よりも状況は危機的だ。

候補者を正式指名する民主党大会は来月19日に開幕予定で、1カ月を切ったなかでトランプ氏に対抗する候補を選び直す必要に迫られている。

バイデン氏が支持を表明したハリス氏は副大統領就任後の目ぼしい実績はなく、支持率は伸び悩んでいる。統計分析サイト「538(ファイブ・サーティー・エイト)」の分析によると、ハリス氏の支持率は38・6%にとどまり、不支持率が50・4%で上回っている。

トランプ氏は21日、ハリス氏の方がバイデン氏よりも「負かしやすい」と、CNNに語ったと伝えられている。

民主党内でも、ハリス氏への対応の濃淡が分かれている。

ビル・クリントン元大統領とヒラリー・クリントン元国務長官の夫妻は声明を発表し、「ハリス副大統領を支持し、彼女をサポートするため、できることは何でもやる」と表明した。

一方、バラク・オバマ元大統領は声明で、「自分自身よりも国民の利益を優先した」とバイデン氏の決断を称賛しながら、後継として支持する人物の名前は挙げなかった。

バイデン政権に近づき過ぎた岸田政権は役割終える

今後の民主党内の動きをどうみるか。

米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「順番からいけば、ハリス氏が新たな大統領候補になるのが順当だが、民主党の中には、『ハリス氏ではトランプ氏と勝負できない』と考えている人が多い。バイデン氏が推薦したからといって、すんなりとハリス氏でまとまることはないだろう。民主党内ではオバマ氏の影響は大きく、彼がハリス氏支持を言わなかったことで候補者選びがごたつく可能性がある。トランプ氏に勝つという至上命題を考え、『彼女では勝てない』という判断があるのではないか。夫人のミシェル氏の出馬を考えているのかもしれない」と話す。

こうしたなか、衝撃的な暗殺未遂事件で「強い大統領像」を示したトランプ氏は存在感を高め、「トランプ・シフト」ともいうべき動きが起きている。

一例が、トランプ氏と、ロシアの侵略を受けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電話会談(19日)だ。トランプ氏は、交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」で、共和党の大統領候補に正式指名されたことを「ゼレンスキー氏が祝福してくれた」と説明した。ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)で、直接会談を開き「永続的な和平の実現」に向けて協議することで合意したと述べた。

トランプ氏の影響力はマーケットにも及んでいる。

トランプ氏がインタビューで、「われわれは大きな通貨問題を抱えている。『強いドルと弱い円、弱い人民元』で、これはとんでもない」と、ドル高是正への意欲を示すと、円高が進むという現象が起きた。

トランプ氏がホワイトハウスに返り咲く可能性が現実味を帯びるなか、岸田政権は昨年、LGBT理解増進法を強引に成立させるなど、バイデン政権との近さを懸念する意見もある。

島田氏は「LGBT理解増進法については、『民主党の主張』を『米国の主張』と誤解して成立させた面がある。共和党の方からすると『日本はどうしたんだ』とみられている。トランプ氏とバイデン氏の方向性は大きく異なっており、トランプ氏はウクライナ侵攻への対応など、すでに政策を掲げている。自民党総裁選に出馬を考えている政治家は、トランプ氏のやろうとしていることをどう考え、どう協調を図っていくのかを明確に示すべきだ」と語った。

トランプ氏の盟友、安倍晋三元首相は拙速なLGBT法成立に反対していた。バイデン政権に近づき過ぎた岸田政権は、トランプ氏復活とともに役割を終えるかもしれない。

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