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ニュース裏表 峯村健司 中国軍による宮古海峡封鎖演習の衝撃 一切公開なし「新型統一戦争」念頭に 「有事」ではなく台湾は「無事」危機感薄い岩屋外相

zakzak by夕刊フジ 2025年1月11日 10時0分

筆者は元日、近くのコンビニですべての全国紙を買って見比べるのが習慣となっている。各社とも、その年の初紙面をどう飾るのか、しのぎを削っているからだ。筆者自身も記者時代、元日紙面の1面トップに掲載するスクープを狙っていたのを思い出す。

目を引いた元旦の読売

だが、今年の各紙のトップ記事を見て肩透かしを食らった。ほとんどが企画記事ばかりだったからだ。そんななか、唯一、目を引いたのが、読売新聞のトップ記事だ。

「中国、宮古海峡で封鎖演習 台湾有事想定か、政府警戒 尖閣にも『重武装』海警船団も初確認」

記事によると、昨年12月22日、中国海軍のジャンカイ2級フリゲート2隻とジャンカイ1級フリゲート1隻に加えて、海警局(海上保安庁に相当)の監視船3隻の計6隻が宮古海峡を太平洋側から東シナ海に向けて航行した。軍艦3隻はこれに先立ち、反時計回りに台湾と先島諸島全体を取り囲むように航行したという。

この一連の行動は、筆者が昨年12月13日発行の本稿で紹介した中国による「ステルス演習」と関連している。1996年の第3次台湾海峡危機以来、最大規模となる約90隻の軍艦と監視船が、日本の南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」周辺で展開を始めた、という内容だった。

いずれの演習も、中国側は一切公開していない。その後の筆者による台湾軍や米軍関係者らへの取材で明らかになったのが、中国海軍の軍艦が12月9日から3日間かけて、台湾東岸沖の「第1列島線」の外側に壁をつくるように展開していたことが分かった。中国が「台湾併合」に乗り出した際、米海軍の艦艇がグアムやハワイの基地から出撃することを防ぐことを想定した演習の可能性が高い。

中国軍は昨年5月と10月に、「連合利剣」と名付けた大規模な演習を台湾周辺で実施している。いずれも軍事演習に加え、監視船による「臨検」を実施することで、台湾の物流を遮断してエネルギーや食料不足に陥らせて強制的に併合を迫る「新型統一戦争」を念頭に置いたものだ。

12月の「ステルス演習」は、封鎖した台湾を救援に向かう米軍の介入を防ぐだけではなく、その封鎖の範囲は南西諸島一帯を含むことを示唆しているのだ。2022年8月の中国軍による大規模演習の際、発射されたミサイルのうち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に打ち込まれたこともその証左といえる。

にもかかわらず、石破茂政権の危機感は薄いと言わざるを得ない。岩屋毅外相は昨年12月の訪中前、香港フェニックステレビの単独取材に対し「私個人として『台湾有事』という言い方は好ましくない。台湾は『無事』であるべきで、『有事』ではない」と語った。

だが、日本が好むと好まざろうとも関係がない。中国側は悲願の「台湾統一」に向けて着々と準備を進めている現実から目を背けるべきではない。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員 峯村健司)

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