Infoseek 楽天

トップ直撃 進化する詐欺被害をハード面からシャットアウト「フィルタ精度上昇」「防止と啓発の外部発信」トビラシステムズ・明田篤社長

zakzak by夕刊フジ 2024年6月25日 6時30分

特殊詐欺やフィッシング詐欺などが社会問題として深刻度を増している。こうした犯罪を抑止するうえで効果的な、迷惑電話や迷惑SMSの「フィルタサービス」を日本でも先駆けて実施したのがトビラシステムズだ。時代のニーズに合わせた製品開発や、啓発にも注力している。明田篤社長(43)は詐欺撲滅のための「問題解決」と、メーカーとしての「誇り」の両面で、さらなる拡大を目指す。

――迷惑電話の情報フィルタリングのサービスは、2011年の固定電話向け「トビラフォン」を皮切りに提供しています

「始めた当時は祖父が一人暮らしで迷惑電話に困っていました。過去に『原野商法』の詐欺被害に遭った経験を機に迷惑電話がかかってくるようになりました。これを防ぐことができたら役に立つ製品ができるのではないかと思い、サービスを始めました。固定電話向けではオプション契約一つでフィルタリングするサービスが伸びています」

――各キャリアのモバイル向けアプリや、企業向けに録音機能も強化した「トビラフォンBiz」も事業の軸ですね

「企業向けには『トビラフォンCloud』もあります。当社のモバイルや固定電話向け製品の利用者は月約1500万人ですが、国内に電話機は2億5000万台程度あるとされ、10%にも満たないのが現状です。詐欺撲滅に精度を上げ、認知度を高めていくのが重要です」

――「迷惑電話フィルタ」の着想はどこから

「2010年に思いついて作り始めましたが、Eメールに似た仕組みがありました。スパムなど迷惑メールのデータベースを元に通信キャリアがフィルタリングしていたのです。アンチウイルスソフトもウイルスの『型』のデータベースをチェックする技術を使っているものがありましたが、当時、電話にはなかったですね」

――データベースはどのように構築しましたか

「初期はインターネット上の口コミ情報を収集し、約7000件のデータで始めました。精度は高くなかったかもしれませんが、何もないよりは効果を感じられる製品で、評判は良かったですね」

――詐欺被害の現状は

「みなさん基本的に『自分は大丈夫』と思っていますが、相手も犯罪のプロなので、電話に1回出たりURLを開いたりすると、巧みな話術やメールにだまされてしまいます。注意喚起などのソフトではなく、ハードで防御していかなければなりません。生成AI(人工知能)で動画も音声もコピーできる大変な世の中です。コンピューターやソフトウエアのセキュリティーが進化しても、最大の弱みは人間なので永遠の戦いです。私たちのような会社がますます必要とされてくると思います」

「ぶれずに自分たちにしかできないことを」

――詐欺防止の啓発も進めています。社員が詐欺の相手とやり取りしたユーチューブ動画は100万回再生を超えました

「情報発信強化チームが昨年11月から本格的にスタートしました。情報自体は会社に以前からありましたが、認知度向上や注意喚起のために外部発信して活用しようという取り組みです。毎月リポートも出しています」

――どのような社風ですか

「製品は自分たちが考え抜いて発明したものが中心です。営業やマーケティング、採用でも『トビラらしさ』を強調しています」

――挫折もありました

「株式時価総額が基準に足りず、23年に東証プライム市場からスタンダードに指定変更したことですね。前年よりも次の年が必ず成長するという人生を送ってきたので、初めて後戻りした経験です」

――今後の目標は

「メーカーであり続けたいと思っています。ぶれずに自分たちにしかできないこと、誰かがやらなければいけないが、誰も解決できていない課題を自分たちの技術で解決していきたい。焦らず、やるべきことをやっていけば、売り上げや利益、株価など結果はついてくると思います。3年以内にはもう一度プライムに戻り、30年に時価総額1000億円までやり切れるような経営者人生にしたいですね」

【家族構成】妻と1男2女。

【手放せない一品】トヨタの新型プリウス。「日本メーカーの良いところの結晶だと思います。海外で通用する日本製品はそんなに多くないですが、トップはやはり車だと考えています」

【仕事の次に熱中していること】トレーニング。「家の近所にジムがあるので、ゆるく長く走ったり、自転車をこいだり、軽い筋トレをしたりしています。体力づくりは重要です」

【よく見るメディア】X(旧ツイッター)を技術系から政治分野まで広く情報収集に活用している。「テレビは好きだが、あまり見ない」という。最近、興味があるのは「日本経済」。

【お酒の飲み方】懇親会や会食時にはハイボールや焼酎のソーダ割りを飲む。「会社の懇親会でちょっとお酒が入ると、みんなも言いたいことを言ってくれるので、お酒のコミュニケーションはいいものかなと思います」

【健康法】運動と睡眠。「昔は大丈夫でしたが、いまは寝ないと頭が回らず、しんどいですね」

【座右の銘】米アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏の«Stay hungry,Stay foolish(貪欲であれ、愚かであれ)»。

「何かしらの欲求が高くなければ、何かを成し遂げようと思えないと思います」

【音楽】高校から大学にかけて、バンド活動に取り組んだ。「若気の至りで、ハードロックだったので髪の毛を長くしていました。当時は日本武道館でのワンマンライブが頂点だったのですが、名古屋の小さいライブハウスですらいっぱいにならなかったので全然だめでした。本当の意味で好きではなかったのかもしれません」

【仕事の中で最高の瞬間】上場時にみんなで東証でお祝いできたこと。「何年も何十人もかけて、その瞬間を目指したので、達成できた思いが強かったです。例えるとオリンピックで表彰台に乗った感じでした」

【今の仕事についていなかったら】「結局今と、同じ仕事をしていると思います。アーティストはひと握りの才能しかたどりつけない個人プレーですが、会社はチームプレーなので、強いチームを作ることができます」

【会社メモ】特殊詐欺やフィッシング詐欺の対策「迷惑情報フィルタサービス」を展開する。本社・名古屋市。2006年設立、固定電話向けの「トビラフォン」をはじめ、各キャリアのモバイルアプリや、ビジネス向け「トビラフォンBiz」「トビラフォンCloud」などを主力とする。19年東証マザーズ上場、20年東証1部指定。22年東証プライム市場に移行し、23年スタンダード市場に。23年10月期の連結売上高20億6100万円、当期純利益5億1700万円。従業員数96人(24年4月末現在)。

■明田篤(あきた・あつし) 1980年12月生まれ、43歳。愛知県豊田市出身。高校から大学にかけてバンドマンとして音楽活動も行った。2004年にIT系の個人事業主として創業する。06年にトビラシステムズの前身となるA&A tecnologiaを設立し社長に就任、10年に現社名に変更する。11年に迷惑電話フィルタ「トビラフォン」を開発した。

ペン/海野慎介 カメラ/三尾郁恵

この記事の関連ニュース