衆院選で歴史的大敗を喫した後も「政権居座り」を続ける石破茂首相に厳しい視線が注がれている。報道各社の最新世論調査で、内閣支持率が軒並み急落したのだ。石破首相は11日召集される見通しの特別国会で再び首相指名を受けた後、今月中旬にペルーで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議に出席する意向で、中国の習近平国家主席や、ジョー・バイデン米大統領との首脳会談にも意欲を示している。ただ、選挙で「国民の負託」を得られなかったリーダーを、他国の首脳が真剣に相手にするのか。石破内閣には「親中・親韓」傾向も指摘されている。同盟国・米国は現在、大統領選の真っただ中だが、今後、石破首相の外交姿勢も注視されそうだ。
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「習主席とか、(米国の)バイデン大統領は、まだ来年の1月までは大統領なので、そういう方々と会談ができたらいいな、ということを調整している」「ウクライナの戦争は3年目も終わらない。北朝鮮は先日、ミサイルを打ち、今までで一番高く上がった。米国まで届くもので大変なことだ。その中で日本がどう行動していくべきか考えたい」
石破首相は4日、地元・鳥取県関係者が集まった東京都内での会合でこう語った。近く召集される特別国会で「首相指名をいただければの話」と前置きしながら、外交を含めた政権運営への意欲を示した。
ただ、衆院選で自身が勝敗ラインに設定した「自公で過半数(233議席)」を大きく割り込むなど、国民に「不信任」を突き付けられたなか、権力に執着する石破首相を取り巻く環境は厳しい。
産経新聞社とFNNが2、3両日に行った合同世論調査で、内閣支持率は政権発足直後の前回調査(10月5、6両日)から9・5ポイントも急落し、43・8%だった。不支持率は前回比14ポイント増の49・8%で支持率を逆転した。他社の世論調査も含めて、政権発足から1カ月余りで不支持が支持を上回るのは異例だ=別表。
こうしたなか、石破首相がAPEC首脳会議に意欲を示したのは、「衆院選大敗」や「支持率急落」といった大逆風を克服したい面もあるようだ。
自民党のベテラン議員は「内政の〝失地回復〟のため、外交に打って出るのは政権の常套(じょうとう)手段だが、諸外国に足元を見られれば、安定した外交は期待できない」と懸念する。
そもそも、石破首相をはじめ、「チーム石破」の外交感覚には疑問が指摘されている。
まず、石破首相は自民党総裁選で、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想や、「日米地位協定の見直し」を打ち出し、米シンクタンク「ハドソン研究所」のホームページに寄稿文も発表したが、その空理空論ぶりは、国内外の外交・安全保障の専門家をあきれさせた。
石破首相の盟友で、安倍晋三元首相を「国賊」と罵倒した村上誠一郎総務相は、就任前の「月刊日本」(10月号)のインタビューで、「新総裁の使命は『安倍政治からの脱却』」「安倍政権以降、政府は集団的自衛権を認めて日米同盟を強化し、中国に対抗する姿勢を強めています」「日本は米国の側に立って中国と対決するのではなく、米中激突を避けるために両国を説得すべき」などと語っており、外交・安全保障政策の転換を強調しているのだ。
■石平氏「中国には毅然とした行動で対処を」
総裁選で石破首相の選対本部長を務めた岩屋毅外相も、就任直後の10月2日の記者会見で、「石破内閣の親中・親韓路線」について問われ、「『嫌韓嫌中』などと言っていたのでは日本外交は成り立たない」「中国とはさまざまな懸案課題があるが、一方で可能性もある」と述べている。
岩屋氏は2018年、海上自衛隊のP1哨戒機に、韓国海軍駆逐艦が火器管制レーダーを照射した当時の防衛相だったが、事件のケジメもつかない段階から、「未来志向の日韓関係」を訴え、自民党内外から批判が噴出した経緯がある。
米国が大統領選で忙殺されるなか、覇権主義的な軍事行動を加速し、日本の主権侵害を繰り返す中国は大きな懸念材料だ。石破内閣はまさか、「米中等距離外交」を志向しているのか。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「沖縄県の尖閣諸島周辺での中国海警局船などの主権侵害は常態化している。8月には中国軍の情報収集機が日本の領空侵犯を行うなど行動はエスカレートしている。中国・深圳の日本人学校に通う男児が刺殺された事件のケジメもついていない。ここで覇権主義の筆頭格である中国にノスタルジーを抱くのは極めて危険だ。根拠のない『日中友好』を頼って、無意味な譲歩をすれば、中国側に誤ったシグナルを送ることになる。中国の主権侵害や領空侵犯、領海侵入などに対し、毅然(きぜん)とした行動で対処しなければならない」と強調した。