Infoseek 楽天

森永康平の経済闘論 「トランプ大統領」で円高株安となるか 契機となるイベントが日米で同時発生、ドル安志向とはいえ〝インフレ加速〟の要素も

zakzak by夕刊フジ 2024年8月1日 6時30分

ドル円相場が一時、約2カ月ぶりの高値をつけた。7月に入り約38年ぶりの円安水準となる1ドル=162円目前まで下落したかと思えば、その3週間後に151円台まで上昇したことを考えると、今月は非常にボラティリティー(変動率)が高い展開が続いている。

今回、ドル円相場が一気に円高方向に動いた理由を考えてみると、日米金利差からの乖離(かいり)を修正するキッカケが国内外で同時多発的に生じたことが挙げられる。

ドル円はさまざまな要因に影響を受けて変動していくが、短期的には日米金利差の動向に左右される。この20年間でドル円相場の動きと日米金利差の推移を重ね合わせてみると、完全に一致しているわけではないものの、両者の動きは緩やかに連動していることが分かる。特に足元の2~3年は連動性が高まっており、今年に入ってからも5月までは連動性が失われることはなかった。

しかし、5月からは徐々に日米金利差が縮小していくなかでも円安が進行していっていた。これまでの連動性を考えれば、何かが契機となり再び円高方向に触れるはずだと考えていたが、そのイベントがくしくも日米で同時に発生した。

米大統領選のテレビ討論会で、民主党のバイデン大統領の支持率が低下した後に、共和党のトランプ前大統領の銃撃事件が起き、その結果トランプ氏の支持率が大きく上昇した。そのトランプ氏が現在の円安水準に懸念を表明していると報じられると大きく円高方向に動き出し、河野太郎デジタル相が「円安是正のために日銀に利上げを求める」という記事が世に出るとさらに円高方向へと動いた。

ドル円相場が円高方向に大きく動くと同時に日経平均株価は大きく下落し、史上初の4万2000円超えを達成したかと思えば、そこから1週間で4万円を割る展開となった。しかし、まだ株式市場に悲観的になるのは早計だろう。日本では経営者が保守的な業績予想を出す傾向があるため、今期の業績は1ドル=145円前後を想定為替レートとしている企業が多い。円高方向に振れたとはいえ、執筆時点ではまだ150円台後半だ。

仮にトランプ大統領が誕生となった場合、ドル安を志向しているとはいえ、減税や関税引き上げ、移民対策など同氏が掲げる政策にはインフレを加速させる要素も大きい。そうなれば意外と円高方向には大きく動かないというシナリオも十分にあり得るだろう。

森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。

この記事の関連ニュース