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ニュース裏表 峯村健司 中国、バチカンと台湾の断交工作か「併合」見据え孤立化狙う 信者減少で「14億人の人口」が魅力的、ローマ教皇庁の思惑

zakzak by夕刊フジ 2024年10月26日 10時0分

バチカン出張報告・第2弾

中国外務省は22日、中国での司教の任命権をめぐる暫定合意を4年間延長するとローマ教皇庁(バチカン)と合意したと発表した。林剣副報道局長はこの日の会見で、「建設的な精神で対話を続け、バチカンとの関係改善を進める」と述べ、バチカン側も「建設的な対話の促進に尽力する」というコメントを出した。

11日発行紙面の本コラムで解説したように、中国が国内の司教を独自に任命したことで対立していた両国は2018年、任命権をめぐって暫定合意を結び、20年と22年にそれぞれ2年間ずつ延長していた。国交はない両国がここ最近、急接近している。

バチカン側が中国との関係改善に積極的な背景には、欧米諸国を中心に信者が減少していることがある。若者の宗教離れや相次ぐカトリック教会内の性的虐待のスキャンダルなどによって、この30年で欧州では30%前後、米国でも12%ほど信者が減っている。外交を担当するローマ教皇庁幹部は筆者に対し、次のように解説する。

「欧米における信者の減少を穴埋めしているのがアフリカとアジアの両地域であり、重点的に布教活動をしている。中でも14億人の人口を抱える中国は魅力的だ」

昨年9月には、ローマ教皇フランシスコの特使が北京を訪れて中国政府の高官と会談するなど、両国間の往来は活発になっている。

一方、中国側にもバチカンを取り込みたい強い動機がある。習近平政権が最も重要な政策に掲げている台湾問題と密接に関係しているのだ。

バチカンは、欧州で唯一、台湾と外交関係を維持している国だ。中国側の外交工作によって、台湾が国交を結んでいるのは12カ国まで減っている。カトリックの総本山であり、国際的にも影響力が強いバチカンとの関係を失えば、台湾はさらに国際社会から孤立することになりかねない。

習政権は「台湾併合」を目指して、連日のように中国軍の艦艇や航空機を派遣して軍事的圧力を強めている。このタイミングで、バチカンが中国と国交を結んで台湾と断交すれば、「有事」の可能性が一気に高まることもあり得る。

中国勤務経験もある千葉明・駐バチカン日本大使は「バチカンが中国を重視していることは理解できる。しかし、バチカンが台湾との関係を拙速に転換することが、緊迫する東アジア情勢にどのような影響を及ぼすのかを十分に検討する必要がある」と警鐘を鳴らす。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員 峯村健司)

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