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大炎上〝中国人10年ビザ〟の外交悪手 観光公害、治安リスクは増大 媚中暴走「事前の根回し皆無」邦人拘束など懸案忘れるな

zakzak by夕刊フジ 2024年12月27日 11時48分

訪中した岩屋毅外相は25日、観光目的で訪日する中国人富裕層向けに10年間何度も利用できる「数次査証(ビザ)」の新設など発給要件を大幅に緩和すると明らかにした。懸念されるのはオーバーツーリズム(観光公害)だけではない。公安関係者は「治安面からもあり得ない」と憤る。中国の65歳以上の高齢者も優遇されるようになった。当地のSNSは「日本の安くて安全な医療が受けられる」と沸いているという。中国は日本の領空や領海に侵入し、日本人の拘束も続けている。ドナルド・トランプ次期米政権の発足で、米中対立も今後激化することは明らかだ。緊迫した時期だけに、石破茂政権の〝媚中暴走〟が際立っている。

岩屋氏は25日、北京で開いた閣僚級の「日中ハイレベル人的・文化交流対話」で10年有効のビザ新設を表明した。観光目的の個人客向けの数次査証はこれまで5年有効が最長だった。発給対象に高所得者らを想定している。

併せて団体観光向けビザも緩和する。滞在可能日数について、これまでの「15日以内」とは別に「30日以内」のものを創設する。

また、65歳以上の中国人は、個人向けのビザで在職証明書の提出が不要になる。

こうした措置について、法務関係者は「入国管理の側面からも、日本政府内の『交通整理』が必須のケースだが、事前の根回しは皆無だった。官邸や外務省の『暴走』ではないか」とあきれる。

今回の発給要件緩和は、中国が日本人の短期滞在のビザ免除措置を再開したことを受けたものだが、妥当な対応なのか。

前駐オーストラリア大使で外交評論家の山上信吾氏は「ビザを免除してくれたから『緩和しないといけない』という日中間の短絡的な力学で判断されたようにみえる。〝媚中〟以外の何ものでもない。本当に経済効果や観光振興を考えるならば、アジア圏だけでなく、欧米やオーストラリアなどの観光客誘致に努力すべきだ」と語る。

山上氏「日中間の短絡的な力学で判断されたのでは」

自民党は10月の衆院選の政権公約で「我が国の成長の鍵となるインバウンドの拡大」を盛り込んでいる。

確かに経済効果は見込めるが、観光客が増えすぎて自然や街並みが損なわれたり、交通渋滞や混雑、モラルの低下などで住民生活の質が下がったりするオーバーツーリズムが社会問題化している。

経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「インバウンド促進派は経済効果をうたうが、観光に来ても中国人が経営するホテルや店舗などを中国人が利用すれば、身内の経済活動の領域として利用されるだけで日本が恩恵を受けない可能性も出てくる。〝経済の植民地化〟といえる」と指摘した。

「邦人拘束」など懸案忘れるな

為替の円安効果で高い宿泊費でもやってくる訪日客が増えることで、日本人の国内旅行者が悪影響を受けるとの指摘もある。

旅行ジャーナリストの大川原明氏は「円安のため訪日外国人は以前より割安に感じていると思う。中国人は団体旅行も多く、全国各地で宿泊費が上がっていくのではないか。京都など静かに落ち着いて過ごしたい人にとっては混雑で旅行を控える人も出てくるだろうし、今後のビザ発給次第でさらに拍車がかかるかもしれない」とみる。

治安の問題も浮上する。

公安関係者は「各国で中国人による犯罪やマナー違反が指摘されるなか、わざわざリスクを招き入れるドアを全開にした。治安面から考えてもあり得ない。中国人は国家へのさまざまな協力を法律で義務化されている。中国政府から『スパイ行為』を命じられれば断れない。今回の決定は安全保障の観点からも極めて危険だ。米国も、石破政権と中国の距離感に疑念を強めつつある」と話す。

日本と中国の間にはいまだ懸案が山積している。昨年3月に北京市内で中国当局によりスパイ容疑で拘束されたアステラス製薬の日本人男性社員も拘束が続き、非公開の裁判にかけられている。

中国は東・南シナ海周辺で海洋進出を強め、今月には沖縄県・与那国島南方の排他的経済水域(EEZ)で新たにブイが確認された。

前出の山上氏は「日本としては邦人の安全確保や、拘束中のビジネスマンを釈放させるなど取るべき対応はきちんと取るべきだ。岩屋氏もいまなぜ北京に行ったのか説明もない。石破首相とトランプ次期米大統領の間でいまだに関係が構築されていないなかで、本来、外相はワシントンに出向いて次期国務長官とすり合わせをするのが優先ではないのか。まず日米同盟を固め、日本の立場を強くしてから中国に臨むべきだった。外交の常道から外れた悪手を打った」と批判した。

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