外国の運転免許を日本の免許に切り替える「外免切替(がいめんきりかえ)」が問題となっている。「学科試験」が◯×式で10問しかないうえ、外国人が取得した免許の住所が「ホテル名」だったなど、理解困難な現状が報じられている。都内の運転免許試験場前には、訪日中国人などが日本の免許を求めて早朝から行列する姿も見られるという。近年、外国籍のドライバーによる無謀運転や死亡事故も発生している。不安や反発の声も聞かれるなか、背景や今後の課題を追った。
「『外免切替』の問題は非常に根深い。国民の関心事であり、警察庁には、外国籍の申請者数と国籍別人数、切り替え後に事故を起こしていたら、原因とその国の交通標識・ルールとの関係性など、関連するデータを依頼している」
自民党政調会長代理の片山さつき参院議員は、外国人による「外免切替」への殺到について、夕刊フジの取材にこう語った。
日本の運転免許はジュネーブ条約に基づき、世界100カ国近い国々で運転できる国際免許に切り替えることができる。中国は条約締約国ではなく中国の免許で運転できる国は限られている。だが、「外免切替」で日本の免許を取得すれば、多くの国々で運転が可能となるという。
試験内容も疑問だ。日本人が免許取得する場合、95問の学科試験が課せられるが、外免切替では、〇×式で10問中7問正解で合格となる知識確認試験と技能試験がある。技能試験の合格率は現在29%。外国人が観光ビザで来日して、滞在先のホテルを日本での住所と申請しても手続きでき、費用も1万5000円程度という。
交通関係のトラブルや事件に詳しい自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は「日本政府は今年3月、外国人労働者の在留資格である『特定技能』の分野に新たに『自動車運送業』も追加し、6月から学科試験での対応言語も増やした(最大24言語)。また、昨年から中国で日本の『外免切替』の簡易さが話題になり、日本の免許取得がブームになっている。中国本土の人にとって日本の免許は『夢の免許証』だ」と語った。
外国人に甘すぎるのではないか。
元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「日本の『外免切替』制度はもともと、外国の大使館関係者や海外のテレビ局クルーなど、一定数の外国人のためのもので、ビザや住民登録の確認が問題になることもなかった。学科試験も『受かってください』という優遇措置のようなもので、留学生らに適用されるなど想定もされていなかった。アジア諸国と比べても日本の制度は15年は遅れている」と話す。
無謀運転や死亡事故も発生
外国人による悲惨な交通事故も発生している。
今年8月、山梨県富士河口湖町で、レンタカーを運転していた中国籍の27歳の女が、60代の中国籍の男女2人をはねて死亡させた。
9月末には、埼玉県川口市の交差点で、中国籍の18歳の男が、飲酒のうえで一方通行を時速100キロ以上で逆走して別の車に衝突し、51歳の日本人男性が死亡した。
片山氏「差別ではなく、治安維持」
東京・港区の野本達矢区議(公明党)が公表した警察庁のデータによると、2023年の外国籍の日本免許所有者(原付以上の全免許)は116万人超で、14年時点から約1・5倍に増えた。国籍別では中国が32万人超で最も多い。日本の免許証を所持する外国籍の運転者(同)による昨年の交通事故件数は6367件で、うち中国が最多の1571件だ。
訪日外国人がレンタカーの利用中に起こす事故も急増している。東京、北海道、沖縄県などのレンタカー協会は「外国の方が運転しています」というステッカー使用を奨励し、日本人向けに注意喚起を促している。
国によっては交通規則やマナーなどに違いもあるなか、外国人が簡単に運転免許を取れてしまうのは、交通安全対策として問題ではないのか。
一般社団法人「国際免許情報センター」の松島隆太郎代表理事は「外国人向けの試験が簡単だというのは、日本人が留学などの際に外国で免許の切り替えをする際も同様で、相互的な取り組みの側面もある。ただ、中国人旅行者向けの白タク行為への利用を目的とした取得も見受けられ、違和感を覚える人が多いというのは理解できる」と話す。
国会への期待もある。
前出の片山議員は6月、参院法務委員会で「外免切替」の問題や、外国人の交通事故について質問した。片山氏の衆院議員時代の選挙区である静岡県湖西市では05年、日系ブラジル人の女が信号無視で別の車に衝突し、日本人の2歳女児が死亡する事故があった。任意保険も未加入だった女は国外へ逃げたという。
片山氏は「新たな法律が必要なら、年明けの通常国会で対応すべきだ。筆記や技能試験の内容を厳しくする、任意保険への加入を促すなど、今できることもある。これは差別ではなく、国内の治安維持の問題だ」と強調した。