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テレビ用語の基礎知識 お金のかけ方がヤバい…韓国の料理人対決番組「白と黒のスプーン」 安っぽいドキュメンタリーより深い「人間の真実」が見える作品

zakzak by夕刊フジ 2025年1月16日 11時0分

この連載では、いろいろとテレビに関する文句や悪口を言ってきましたので、たまには褒めてみたいと思います。

最近、かなり驚かされた番組が、Netflixで見た「白と黒のスプーン~料理階級戦争~」です。いやあ、スゴイ。韓国の料理人対決番組で、すでに成功を収めた20人の「白スプーン」料理人たちと、まだ無名の「黒スプーン」料理人80人がバトルを繰り広げるという話なのですが、かなり面白かったのでオススメします。

まず、とにかくお金のかけ方がヤバい。ものすごく巨大そうなスタジオに、めちゃめちゃ豪華なキッチンセットを大量に組んである感じなのですが、見たことないくらいキレイで大掛かり。ちょっと日本のテレビ局では逆立ちしてもかなわないレベルです。そして技術もすごくて、撮影も照明も音声も「これいったいどうやってやってるんだろ」と首をかしげたくなります。カメラもほとんど見切れないし、音声もどうやって拾っているのか謎だし、きっとかなりお金をかけていそう。

出演者もなんだか強烈そうな料理人を山ほどそろえて、食材の集めかたも桁外れ。そして何より演出がなかなか凝っていて、無駄のない素晴らしい構成っぷりです。全部で12回なのですが、ネタバレしないように何も書けませんけど、次から次へと驚かせる展開で飽きさせません。

そして、何より感動したのは、料理人とか料理というものの姿をかなりリアルに見させてもらった気持ちにさせてくれること。対決番組って、その対決方式とかルールで「えー」と思ってしまうことが多くて、なんだか対決自体に変な「お約束や遠慮」を感じてしまいがちなのですが、この番組は結構容赦がない。参加した料理人を多角的にイジメ抜いて、極限まで追い込んでいるから、そのへんの安っぽいドキュメンタリーよりよっぽど深く「人間の真実」を見させてもらえます。

ぜひ後輩ディレクターたちには教科書的な意味でも見てほしい、そんな作品ですね。そして、日本人的には結構韓国のレストランや料理、そして食材や調理法についての理解も深められそうで、「ぜひ次にソウルに行ったら食べてみたい」というお店が増えました。そういう意味でもオススメしたい作品です。

日本でもこういう番組を作ることができたら、きっといろいろすごい料理人のみなさんがいるはずだから面白いのにな…でもきっと今の日本のテレビ業界では無理よね…と考えると寂しい気持ちになりますけど。いつか見てみたいですね。

■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。

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