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江崎道朗 国家の流儀 増大する外国人労働者の実態を調査せよ 岸田政権が受け入れ推進 公的年金や医療保険の納付実態さえろくに調査をしていない

zakzak by夕刊フジ 2024年8月26日 6時30分

米大統領選の争点の1つが不法移民問題だ。不法移民の増加に伴うコスト、治安悪化などが政治問題化しているのだ。実はこの問題は、日本にとっても人ごとではなくなりつつある。

70年に総人口の1割に

わが国は近年、人手不足解消のために外国人労働者を増やす政策を次々と実施してきた。そのため在留外国人は増え続け、いまや全人口の3%、約340万人となった。永住許可者も増え続け、約90万人となった(2023年)。

しかも岸田文雄政権は24年6月14日、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」を成立させ、外国人労働者の受け入れをさらに推進することを決めた。

このまま外国人労働者の受け入れを増やしていくと、70年の総人口8700万人に対し、外国人が1割を占める(出生中位・死亡中位)ことになる(23年発表の将来推計人口)。

国益を基準に政策確立

だが、果たして本当にそれでいいのか。

そうした問題意識から、櫻井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」は6月21日、政策提言を公表した。

その提言の第1は「国益を基準にする外国人政策を確立せよ」ということだ。人手不足解消のために外国人労働者を受け入れる現在のあり方で本当にいいのか。国会で「外国人基本法を作って、外国人受け入れはわが国の国益を判断基準とするという原則を確立」すべきではないのか。

そもそも、「外国人単純労働者の受け入れと国民経済全体の関係、外国人労働者の増大による社会保障や教育などの社会費用拡大、日本人単純労働者の柔軟な働き方などについて、国民的議論を」すべきではないのかと訴えたのだ。

提言の第2は「永住許可の急増を止めよ」ということだ。1998年に永住許可要件が日本在留20年から10年に短縮されてしまったことから永住許可者も増えている。しかし、なぜ短縮されたのか、その経緯が不明なのだ。

定住制度への一本化も

そこでまずは、「平成30(2018)年の入管法改正付帯決議に基づき永住許可の要件を日本在留20年に戻(す)」「その上で、期限をつけて更新のたびに国益の観点から審査できる定住制度への一本化を検討せよ」というわけだ。

こうした外国人政策を議論するうえで必要なことは、正確なデータを集めることだ。実は、日本に住民票がある外国人は日本人と同様に公的年金や医療保険に加わる必要があるのだが、その納付実態さえろくに調査をしていない。

「外国人労働者の増大による社会保障や教育などの社会費用拡大」などについて議論するためにも、まずは官邸主導のもと、法務省、厚労省、文科省、総務省、警察などが連携して徹底した実態調査を実施すべきだ。

感情論や印象論を排してデータに基づく冷静な議論を進めたいものだ。 =おわり

■江崎道朗(えざき・みちお) 麗澤大学客員教授・情報史学研究家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎道朗塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、23年にはフジサンケイグループの「正論大賞」を受賞した。著書・共著に『シギント―最強のインテリジェンス』(ワニブックス)、『ルーズヴェルト政権の米国を蝕んだソ連のスパイ工作』(扶桑社新書)、『日本の軍事的欠点を敢えて示そう』(かや書房)など多数。

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