ドナルド・トランプ次期米大統領が7日、米南部のフロリダ州で記者会見した。デンマーク領グリーンランド購入にデンマークが応じなければ関税を課すと警告した。さらにNATO(北大西洋条約機構)各国の国防費をGDP(国内総生産)の5%に引き上げるべきとの考えも示した。新春から炸裂(さくれつ)した「トランプ砲」は一見、過激だが識者は戦略的狙いがあると分析する。
「経済安全保障上必要だ」「(軍事的・経済的圧力を)かけないとは保証できない」
トランプ氏は記者会見で、グリーンランドの重要性についてこう述べた。
グリーンランドは戦略的に重要な北極圏に大部分が位置し、米宇宙軍の基地も置かれている。トランプ氏は第1次政権時代から買収の考えを明らかにし、長男のジュニア氏が7日、グリーンランドを訪問した。
グリーンランドの重要性について、元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「鉱物資源も豊富で、地理的、戦略的に重要な地域だ。地球温暖化の影響で(氷が解け)北極海航路のルートは各国が価値に注目している。ロシアだけでなく、中国も巨大経済圏構想『一帯一路』の拡大バージョンで手を出そうとしているとの情報もある。長男が訪問していることからファミリービジネスの利益に関わる意図も考えられるが、米国にとって戦略的価値があることは確かだ」と指摘する。
現在国防費の目標をGDP2%としているNATOについて、トランプ氏は「2%ではなく5%にすべきだ」と訴えた。
過激発言の狙いは何か。
渡部氏は「トランプ氏はウクライナ支援に後ろ向きで、NATO諸国に責任を負わせようという姿勢もみられる。関税に加え、国防費についても今後、欧州外交のディール(取引)材料に使っていく狙いがあるのではないか」と話した。