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中国に続きロシアも領空侵犯 総裁選に合わせ新リーダー〝値踏み〟か 初の「フレア」警告、航空自衛隊のF15とF35が緊急発進

zakzak by夕刊フジ 2024年9月24日 15時30分

ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシア軍が、度を超えた威嚇・挑発を日本に仕掛けてきた。哨戒機1機が23日、北海道・礼文島付近の日本領空を3度にわたって侵犯したのだ。航空自衛隊のF15戦闘機とF35戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、赤外線誘導ミサイルなどを撹乱(かくらん)する「フレア」による警告を初めて実施した。事実上、次期首相を決める自民党総裁選(27日投開票)や、野田佳彦元首相が23日に選出された立憲民主党代表選に合わせるように、ロシアや中国、北朝鮮による暴挙が続いている。日本の新たなリーダーを「値踏み」するような行動に対し、識者は「有事」に対応できる指導者が求められていると指摘する。

「ロシア軍機による領空侵犯は極めて遺憾だ。わが国周辺空域での軍事動向を注視し、警戒監視に万全を期す」

林芳正官房長官は23日、記者団にこう述べた。

訪米中の岸田文雄首相から、冷静かつ毅然(きぜん)と対応し、米国など関係国と緊密に連携するよう指示を受けたことも明らかにした。政府は首相官邸の内閣危機管理センターに情報連絡室を設置した。

木原稔防衛相も23日、東京・市谷の防衛省で「極めて遺憾」と述べた。ロシアに対しては、外交ルートを通じてロシアに強く抗議し、再発防止を求めた。

防衛省によると、ロシア機は礼文島の北側の海域上空に西側から接近し、午後1時3~4分ごろ約1分間、日本領空に入った。いったん領空を出たものの、南北にジグザグ飛行した後、領空内をかすめるように旋回し、午後3時31分ごろに約30秒間、同42~43分ごろに約1分間侵犯した。「意図的な侵犯行為」と判断せざるを得ない。

対応した空自戦闘機は無線で退去するよう警告を続け、3度目に侵犯した際に「強い警告の意思」を伝えるために、フレアを発射した。ロシア機はその後、現場空域から離れた。フレア発射は、北海道・北東北地域の防空を任務とする空自北部航空方面隊(青森県三沢市の空自三沢基地に司令部)が判断したという。

海でも同日、挑発的な行為が強行された。

中国とロシアの海軍艦艇計8隻が23日、宗谷海峡を太平洋に向けて共同航行したのだ。確認した防衛省統合幕僚監部が同日、発表した。ロシア海軍と中国海軍は今月、合同演習「北部・連合―2024」を日本海で実施しており、木原氏は「(ロシア機の領空侵犯と)関連している可能性が考えられる」との見方を示した。

岸田首相が8月14日、総裁選への不出馬を表明して以降、永田町は次期リーダーを選ぶ政局に突入した。自民党総裁選や立憲民主党代表選がニュースの中心となり、両選挙に立候補した政治家による論争が続いている。

こうしたなか、ロシアや中国、北朝鮮という覇権主義国家は次々、日本に対する軍事的威嚇を仕掛けている。

中国軍は8月26日、長崎県五島市の男女群島沖の日本領空に初めて情報収集機を侵犯させ、その5日後には測量艦を鹿児島県・屋久島周辺の日本領海に侵入させた。今月18日には、中国海軍の空母「遼寧」がミサイル駆逐艦2隻とともに、沖縄県の与那国島と西表島の間の接続水域に侵入した。

北朝鮮による弾道ミサイル発射も相次いでいる。そして今回、ロシアによる領空侵犯が起きた。

渡部悦和氏「自衛隊の対応をみる狙いがあったのでは」

識者は今回の事態をどうみるか。

元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「ロシアによる3度の侵犯は明らかに『強烈な意図』が感じられる。日本の自衛隊の対応をみる狙いがあったのではないか。日本国内では自民党総裁選が行われ、岸田首相は訪米で不在だったというタイミングが狙われたのかもしれない。11月の大統領選を控えた米国が動けないことも日本に揺さぶりをかけた一因だろう」と話す。

時期リーダーはモノを言える人物を

ロシアの領空侵犯に対して、事実上の次期首相となる自民党総裁候補も言及をしている。

高市早苗経済安保相は23日、X(旧ツイッター)に「自民党総裁選の討論の中で、複数の候補者とともに、過日の中国軍の行為への対処が緩すぎて『日本がナメられている』旨の発信をしたことも、多少は影響したのかもしれません。中国、ロシア、北朝鮮が、外交・軍事・経済面で協力関係を深めている中、日本の国防力強化の必要性は論をまちません」と発信した。

小泉進次郎元環境相も同日、Xで「我が国の主権に対する深刻な侵害であり、強く抗議します。政府には、情報収集・分析を進めるとともに、我が国の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの決意の下、毅然と対応するよう求めます」と投稿した。

次期リーダーには、どのような政治家が求められるのか。

前出の渡部氏は「次の国家のリーダーは、日本の安全保障、防衛に明確なビジョンを持ち、中国、ロシア、北朝鮮の権威主義国に厳しく対応する人物が求められる」と話す。

権威主義国の暴挙に対し、「遺憾砲」が目立つ日本政府の姿勢に疑問を呈する意見もある。

軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「中国やロシアは、自民党総裁選中の『政治的空白』に冒険心を持って臨んできている。最大野党のリーダーを決める立憲民主党の代表選も一つのタイミングではあるだろう。次期リーダーは、外交ルートでの抗議や、官房長官の『遺憾砲』だけで済ます人間は避けなければならない。外交・安全保障に精通し、自ら首脳同士で断固として抗議や、モノを言い合える人物でなければ、中露に侮れたままになるのではないか」と語った。

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