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わが社の「健康経営」 花王(1)会社の健康診断と健保の人間ドック、結果をデータベース化 行動変容促すため健康マイレージや表彰制度を打ちだす

zakzak by夕刊フジ 2024年7月10日 15時30分

会社員なら労働安全法に定められた健康診断やストレスチェックは、当たり前のように受けているだろう。結果が悪ければ、再検査などで医療機関の受診が会社から促されるが、「時間がない」と無視されることも。だが、健康経営が浸透すると無視できなくなる。健康に導かれ、仕事のパフォーマンスも上がり、自分も会社も両得。この健康経営の〝手本〟と称される会社のひとつが花王。その取り組みとは。

【データの徹底活用】

会社が行う健康診断と、健康保険組合がサポートする人間ドックは、結果がリンクされていないことがある。全社一丸となって〝健康〟を推進するには、データがバラバラでは内容を把握しづらい。

「健保と会社の健診を統合し、健康づくり支援システム『元気くん』を2003年に導入し、データベース化しました。集計したところ、意外に『肥満者がいる』『眠れない社員がいる』ことがわかったのです」と、同社人財戦略部門健康開発推進部長の守谷祐子氏。

データを分析して初めて知った従業員の生活習慣の乱れに対し、行動変容を促すために、「花王健康マイレージプログラム」を始めたという。だが、なかなか現場に浸透しない。トップダウンの効力を活用して、08年、「花王グループ健康宣言」を発出。現場に合わせたさまざまな取り組みを打ち出し、表彰制度も導入した。

経済産業省などが「健康経営銘柄」の選定を開始したのは14年。花王は、その前から健康データを活用し、健康経営に取り組んでいた。

【好事例の共有化】

07年にスタートした「花王健康マイレージプログラム」は、1日の歩数や、健康診断、社内の健康イベント参加などでポイントがたまる仕組み。積もり積もれば年間1万円相当のポイントがたまるそうだ。

「会社と健保があなたの健康を支援する。職場のマネジャーも、セミナーへ行くように促すなど支援する。各部署が集計データを分析し、勉強会を開き、好事例を共有化することで、相乗的な成果を生み出す仕組みができています」(守谷氏)

たとえば、健康経営に限らず健康を意識していると、体重が落ちたなど成功体験した友人や同僚に、「どうやったの?」と聞きたくなるだろう。自分では思いもつかない方法が見いだされ、実践すると同じ体験ができることがある。一見、単純な情報共有だが、組織的に好事例を共有化して生かすと、自然に健康に導かれるのだ。

「当社の強みを生かした『測る』『食べる』『歩く』の3分野でプロジェクトを展開していることも、従業員のモチベーションアップにつながっています」と守谷氏は話す。

データ分析で緻密な戦略を立てながら、実践方法はわかりやすく簡単。それが健康経営を浸透させるコツといえそうだ。 (取材・安達純子)

■花王株式会社 ハイジーン(衛生)&リビングケア、ヘルス&ビューティケア、ライフケア、化粧品の分野で一般消費者向け製品事業、サステナブル素材などケミカル事業を展開。グループ従業員数3万4257人(2023年12月31日時点)。創業1887年。1940年設立。経済産業省等の「健康経営銘柄」に9度目、「健康経営優良法人(ホワイト500)」に8年連続で認定。

【健康経営】従業員の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に実践すること。従業員の健康が生産性や企業価値の向上につながり、就活や転職先企業の指標にもなる。

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