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お金は知っている 石破政権では対抗困難な横暴中国 ただでは転ばない習政権 供給制限をちらつかせ、日本の自動車メーカーなど中国市場につなぎとめ

zakzak by夕刊フジ 2024年11月1日 6時30分

わが国は27日の衆院選で与党が大敗した。求心力を失った石破茂政権は、減税を掲げて議席数を大幅に増やした国民民主党を取り込まざるを得ないとの予想から、株価は堅調だ。実際に、実質可処分所得が減る半面で税収が増える有り様なのだから、積極財政路線は理にかなう。

対照的なのが共産党独裁の中国だ。共産党が市場経済を支配し、操縦する特異な経済システムが機能不全に陥り、習近平党総書記・国家主席が国内向けに打つ手はことごとく失敗している。その結果、不動産バブル崩壊の底が見えないし、デフレ不況が深刻化しつつある。

グラフは中国の固定資産投資、住宅投資及び外国企業による対中直接投資の前年比増減率の推移である。固定資産投資は住宅など不動産開発、企業設備、インフラなど地上に建つ構造物の新増設のことだ。それを主導してきたのが住宅投資である。バブル崩壊とともに住宅投資は2022年以降急減し続けている。固定資産合計の投資は「新質生産力」と称する新産業分野への投資増で底を打ったかのように見えるが、後述するように投資収益率は悪くて持続しそうにない。

習政権は10月12日にデフレ不況対策として大型の財政出動を示唆したが、金額を明示できないままだ。グラフが示す直接投資など外国からの投融資が激減しているために外貨の流入が細り、外貨に依存する人民元金融の大幅な拡張が困難になっているからだ。

不動産開発に代わる成長の牽引(けんいん)役として政府補助金を投入してきたのが、電気自動車(EV)、太陽光パネルなど新質生産力である。ところが、中国当局発表でもこれら工業部門の利益の減少が加速しており、9月は前年同期比で27%減った。高まる中国市場リスクをみて、西側企業の大半が対中新規投資を止め、撤退を急いでいる。対中直接投資はこの6月までの1年間計で、前年比で100分の1にまで落ち込んだ。

習政権はますますダンピング輸出攻勢に走り、さらに部品や材料のサプライチェーン独占力を武器にした対外威圧、日本企業など外資の技術奪取に向け、策謀を凝らすだろう。どれも国際ルールを無視し、世界経済を攪乱(かくらん)する。

米大統領選ではハリス、トランプ両候補が対中高関税案を競っている。欧州も中国製EVなどの輸入制限に踏み切った。新興国の多くも、不当廉売の中国製品に反発を強め始めている。中国経済は八方塞がりの様相を呈している。

だが、習政権はただでは転ばない。昨年以来、EV用電池の材料である黒鉛、ハイテク製品に欠かせないレアアース、レアメタルなどの供給制限をちらつかせている。この威圧によって、日本の自動車メーカーなどの企業を跪(ひざまず)かせ、中国市場につなぎとめるばかりか、最先端技術の提供を催促している。

日本経済再生の鍵は中国に負けない産業競争力を維持し、高めることにあるのだが、脆弱(ぜいじゃく)な政権では横暴な中国に対抗できそうにない。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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