12月9日に財務省が発表した10月の国際収支統計の速報値によると、サービス収支は7カ月連続の赤字となった。
サービス収支のうち、クラウドサービスの利用料などを含む「通信・コンピュータ・情報サービス」、ネット経由のデジタル広告などを含む「専門・経営コンサルティングサービス」、動画や音楽配信サービスのライセンス料を含む「著作権等使用料」という3項目をデジタル収支とし、これら3項目の収支がずっと赤字であり、かつ赤字額が毎年増大していることから、近年では「デジタル赤字」として問題視されるようになってきた。
10年前の2014年時点では2・15兆円だったデジタル赤字は、23年には5・52兆円まで拡大した。24年は10月までの累計赤字額が5・63兆円と既に23年を超えている。24年は毎月の赤字額が平均5600億円ほどであることを勘案すれば、年間の赤字額は6兆円を超えることが確実視される。
普段の生活を思い返してみると、パソコンやスマートフォンではマイクロソフト、アップル、グーグルの基本ソフト(OS)を利用しており、クラウドサービスもアマゾン、マイクロソフト、グーグルのいずれかを利用している。SNSや動画・音楽配信もフェイスブック、X、ネットフリックス、ユーチューブを利用し、デジタル広告もそれらにひも付いているのだから、デジタル赤字が膨らむのは当然だ。
それではデジタル赤字はそれほど問題なのだろうか。家計と同様に考えて赤字だから問題だと考えるのは少し安直かもしれない。考え方によっては日本のデジタル化が進んだことの表れとも捉えられるだろう。また、デジタル赤字が問題だからといって、日本から「GAFAM」のようなグローバルなリーディングカンパニーを各分野でリプレースする(取って代わる)企業が次々に誕生するとは考えにくい。
むしろ、それらプラットフォームのなかで日本が海外から稼ぐことはできないのだろうか。内閣官房が公表した新しい資本主義実現本部事務局の基礎資料によれば、22年におけるコンテンツ産業の輸出額は4・7兆円で、半導体産業の5・7兆円、鉄鋼産業の5・1兆円に匹敵する規模となっている。
アニメや漫画などIP(知的財産)を中心としたコンテンツ産業を育成することが、副次的には訪日外客数を増加させ、インバウンド消費が増えることでサービス収支の赤字削減にも寄与するだろう。
森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。