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1万本を見た映画記者 極私的スター名鑑 レネー・ゼルウィガー かつての「恥ずかしがり純情娘」が徹底した役作りで変貌、屈指の演技派に

zakzak by夕刊フジ 2024年8月28日 6時30分

感情表現が豊かな女優は、いつか脚光を浴びる日がくる。レネー・ゼルウィガーはその代表格。テキサス州の田舎町で育った彼女は、テキサス大学で演劇に興味を持ち、CMやインディペンデント映画に出演していた。

やがて本格的な女優を目指してロサンゼルスに引っ越し。人気スターのトム・クルーズが主演した「ザ・エージェント」(1996年)でヒロインに抜擢(ばってき)され、シングルマザー役を好演した。

この映画の宣伝で来日したレネーは実に初々しかった。筆者が下積み時代のことを聞くと、透き通るような色白の顔を真っ赤に染め、小声でしどろもどろに答えた。

「ロサンゼルスに移ったころは仕事がなかったので、バーのウエートレスをしていた。ホテルのドアマンをやったこともある。だからこの映画の出演が決まって監督から電話をもらったときは、本当にうれしかったわ」

こんな恥ずかしがり屋の純情娘がハリウッドで生き残れるのだろうかと心配した。しかしその後の目覚ましい活躍ぶりには驚くばかりだ。

体重を大幅に増やして挑んだ「ブリジット・ジョーンズの日記」(2001年)が世界的に大ヒットしてシリーズ化。ダンスの特訓に耐えて挑んだミュージカル映画「シカゴ」(02年)では2年連続アカデミー主演女優賞候補になり、南北戦争を背景にした純愛ドラマ「コールドマウンテン」(03年)の村娘役で同助演女優賞に輝いた。

しばらく休んだ時期もあったが、ハリウッド黄金期の伝説的大スター、ジュディ・ガーランドの晩年を演じた「ジュディ/虹のかなたに」(19年)でついに同主演女優賞を獲得。徹底した役作りで別人に変貌する屈指の演技派になった。

■レネー・ゼルウィガー 1969年4月25日生まれ、55歳。米テキサス州出身。

■垣井道弘(かきい・みちひろ) 1946年、広島県三原市生まれ。明治大学文学部卒。週刊誌「女性自身」の記者を経て、映画評論家になる。著書に「MISHIMA」(飛鳥新社)、「今村昌平の製作現場」(講談社)、「ハリウッドの日本人」(文芸春秋)、「緒形拳を追いかけて」(ぴあ)などがある。

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