野球殿堂のエキスパート部門で16日、選出が発表された掛布雅之氏(69)が、理想の4番像として阪神の先輩だった田淵幸一氏(78)を挙げ、今季トラの新4番として期待される森下翔太外野手(24)にエールを送った。
入団テストを経てドラフト6位で阪神入り当初から、不動の「4番・捕手」だった田淵氏にあこがれ、ともにクリーンアップを形成するまでになった掛布氏だが、1978年オフに田淵氏は西武へのトレードが決定。阪神を去る前の最後の電話では、同じようにトレードに出された元エースの江夏豊氏や自身を引き合いに、「途中で縦じまのユニホームを脱ぐような選手になっちゃダメだぞ。最後まで着続けて4番を打てよ」と激励されたという。
言われた通り、阪神一筋でユニホームを脱いで37年後の殿堂入り。「田淵さんを見て野球をやってきたので、阪神の4番像は田淵幸一なんです、僕にとって。ホームランと、チームの負けを背負える4番。ヒーローになる田淵さんよりも、負けを背負って戦っている田淵さんを見て、4番ってこうでなければいけないんだなと」と振り返る。
藤川新監督の構想で4番に指名された森下にも「そういう気持ちを持って、チームを引っ張っていってもらいたい」とエールを送りつつ、岡田前監督のもとで4番を務めた大山に「若い4番バッターを育てるなかで、僕にとっての田淵さんのような存在になれば、素晴らしいクリーンアップをつくれるんじゃないかな」と後見役を託すなど、伝統の継承を期待する。
一方で好ましい変化も感じているという。自身の現役時代と比べ、阪神は「選手にとって野球はすごくやりやすくなった。勝つチームの環境がファン、マスコミ、球団含めて整ってきている」と指摘。球団が「選手をきちっと守ろうとする姿勢も感じられるし、選手のやった野球に対する評価もちゃんとしてくれる時代になった」という言葉には、辛辣な批判記事や不当な査定に悩まされた当時の実感がこもっていた。 (笹森倫)