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有本香の以読制毒 パリ五輪・女子ボクシングで〝炎上〟女性の安全のため「セックスチェック」復活を IOCの判断基準は「パスポートの性別」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月5日 15時30分

パリ五輪が「炎上」続きだ。

まずは開会式の一幕が「キリスト教への冒瀆(ぼうとく)」だとしてカトリック関係者らの反発を招いた件だが、ついにバチカン(ローマ教皇庁)までもが3日、「いくつかの場面に悲しんでいる」との声明を発表した。

選手村では、菜食中心の食事が不評を買ったり、冷房が有料だったり。競技も、セーヌ川で泳いだトライアスロン選手の体調不良など、トラブル続きである。

そんな中で、日本選手の活躍ぶりは素晴らしいが、柔道の判定については首をかしげる場面が多かった。メダルのいくつかを不当に逸したと思った日本国民は少なくないようで、フランスという国に対し、日本人が抱くイメージも相当悪化したといえる。

連日の「炎上」の中でも、とりわけ物議を醸したのが女子ボクシングだろう。66キロ級ではアルジェリアのイマネ・ヘリフ選手、57キロ級では台湾の林郁婷(リン・ユーティン)選手という、ともに男性特有の「XY染色体」を持つとされる2人が、メダル獲得を確実にした件である。

本件では当初、世界規模で「誤解」が広がった。多くの人がヘリフ選手をトランスジェンダーだと思い込んだのだ。かくいう私も最初そう思った。今回のパリ五輪が、開会式からして「LGBTQ礼賛」だったことからの反射的誤解だったかもしれない。

ヘリフ選手への非難が高まると、前述の情報が広まりだした。国際ボクシング協会(IBA)のリークとされる情報は、ヘリフ選手は女の子として生まれ育ったが、実は「XY染色体」を持つ人だというものだ。「性分化疾患」(=生殖器や性器が通常の性染色体とは異なって見える)らしいともいわれたが、実情は依然不明なままである。

この不明さが問題の火元となっている。

さらに、今大会で国際オリンピック委員会(IOC)は、「(スキャンダル続きの)IBAのガバナンス体制には問題がある」として、五輪競技の管轄権を剥奪した。

これが問題を一層ややこしくしている。

IBAは3日、ヘリフ選手、林選手の2人には出場資格がなかったと発表。2023年の世界選手権時に「女子選手に対し、不当なアドバンテージがある」ため失格となったという。

一方、IOCはIBAの決定を認めなかった。では、その判断基準は何かといえば、ほぼ「パスポートの性別」のみという、信じ難いものなのである。

さらにヘリフ選手が前回の東京五輪でも女子として出場しながら、圧倒的強さを見せていなかったことや、「性分化疾患」の不可解さも問題を複雑にしている。

そんな本件について、説得力ある意見を述べた人がいる。1976年のモントリオール五輪で、陸上男子十種競技で金メダルを獲得し、2015年になってトランスジェンダーであることを公表したケイトリン・ジェンナー氏だ。米FOXニュースで、こう語った。

「XXなら、あなたは女性側、XYなら男性側。結局はそうするしかないの。今回のことは五輪を大いに傷つけた。IOCは恥じ入るべき」

かつてIOCは、男女別の競技の公平性を保つため、1968年のメキシコ五輪から96年アトランタ五輪まで「セックスチェック」なるものを行なっていた。

IOCが採用する前に採用した国際陸上競技連盟(IAAF=現ワールドアスレティックス)が、触診などで騒ぎとなったこともあり、その後、方法は染色体検査へと変わっていった。しかし、現在ではそれも倫理上の理由から行われていないのである。

IOC幹部ら、意識高き欧州の皆さまは、古きに立ち返ることなどお嫌いだろうが、この際、女性の安全のため、染色体による「セックスチェック」を復活させていただけまいか。立ち返りついでに子供の扱いも考え直していただけたら幸いだ。

ジェンダーイデオロギー全開の開会式に子供を共演させるなどというのは、どう見ても非常識である。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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