【後編】
――来年1月4日の東京ドーム大会「レッスルキングダム」での引退ロード初戦は因縁のEVILが相手。場外に落ちた選手をセコンドが押し上げて、リング上で決着をつけるランバージャックデスマッチで行う
「EVILに『引退ロードは1試合で終わりだ』と言われましたが、ラスト1年は派手に終わりたいので、初戦で負けるわけにはいかない。今春ぐらいからEVIL率いるハウス・オブ・トーチャーの乱入、介入が目に余って…。ファンの方から『こういう試合が見たいんじゃない』というご意見が会社や僕のSNSに多く届いて、観客離れにつながっているのが分かりました。1・4でブチのめして、完全決着をつけるしかない」
――SNSの意見は目にする
「特にいい意見は見ます。厳しい意見もあります。僕はブーイングをもらって、アンチも多かったので」
――今年は反則を禁止にするのか
「反則はプロレスには必要だと思う。プロレス以外のスポーツにも反則はあるので種類によりますね。勝ちたいための反則ならファンも納得する。試合を壊す反則は許さない」
――見た中で印象に残っている引退試合は
「大学生のときに、アントニオ猪木さんの引退試合(1998年4月4日)を京都から東京ドームへ見に来て。いつもはスタンド席だったけどそのときは奮発して、花道のすぐ脇の3万円の席で見ていた」
――よく見ればテレビに映っているのでは
「探せば出てくるかもしれない。セミファイナルで藤波辰爾さんが佐々木健介さんをジャーマンスープレックスで破って、IWGPヘビー級を獲った試合でボロ泣きして感動した。猪木さんの引退試合で、藤波さんとの試合をもう1回見たいと思っていたけど、相手はドン・フライ。猪木さんらしさを残しての引退だったので、〝棚橋らしさは何か?〟を1年通して考えようかなと」
――2021年に統一されたIWGP世界ヘビー級のベルトは巻いていない
「引退試合でチャンピオンに挑戦して、負けたら引退、勝ったら現役続行…。〝え~〟ってなるか(笑)。社会的な信用を失いそうだ」
――やはり生で見るプロレスは迫力が違う
「僕がファンのときは重要な試合を観戦したかどうかが大事で、新日本対Uインター(1995年、東京ドーム)も見に行った。みなさんのプロレス履歴に〝棚橋引退試合生観戦〟を残してほしい」 (おわり)
■棚橋弘至(たなはし・ひろし) 1976年11月13日、岐阜県生まれ。立命館大を卒業後、99年に新日本プロレス入門し、看板タイトルのIWGPヘビー級王座を最多8度戴冠。真夏の最強決定戦G1クライマックスは3度優勝。プロレス大賞MVPは4度受賞。昨年12月に新日本プロレス代表取締役社長に就任。181センチ、101キロ。