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ドイツの「失速」招いたメルケル前首相 共産主義エリート教育を受け、プーチン氏と親密 「人権・環境全体主義」が国を滅ぼす

zakzak by夕刊フジ 2024年9月2日 6時30分

ドイツが名目国内総生産(GDP)で日本を抜いて3位になったことは大きな話題になった。しかし、国際投資アナリストの大原浩氏は「ドイツ復活はうたかたの夢だ」と指摘する。大原氏は寄稿で、「人権」や「環境」を大義名分としたイデオロギー優先の政策が経済や社会の混迷を招いていると分析し、日本も「他山の石」とすべきだと強調する。

ドイツ・シュピーゲル誌は2月15日、「ドイツが再び第3位の経済大国に」と報道した。実際、同じ日に日本の内閣府は、2023年の名目国内総生産(GDP)が、ドル換算で4兆2106億ドルと発表、4兆4561億ドルだったドイツに抜かれて4位に転落した。

日本政府は、名目GDPがドイツに抜かれたのは「円安」と「ドイツのインフレ」による影響が大きいと説明している。為替相場は、21年前半の1ドル=100~110円程度のレンジから大幅に円安に振れている。

ドイツの名目GDPは6.3%増と伸びたが、インフレの影響を除く実質GDPでは0.3%減とマイナス成長だった。ドイツが世界第3位になったというのは、特殊要因に支えられた「うたかたの夢」といえよう。

数年前、「GDPで米国を抜いて世界第1位になる」と大騒ぎしていた中国は、習近平政権の失策が続き、不動産バブルの崩壊で「失われる50年」が予想される。

ドイツも日本にあっという間に再逆転されるであろう。これから「失われる30年」に突入すると考えられるからだ。

ドイツの混迷の原因はたくさんあるが、アンゲラ・メルケル前首相の05~21年までの「16年間の独裁」の影響がかなり大きいと筆者は考える。

メルケル氏は旧東ドイツ出身(生誕は旧西ドイツ)で旧ソ連式の「共産主義エリート教育」を受けた人物である。もちろんロシア語も堪能であり、ソ連国家保安委員会(KGB)時代に旧東ドイツで勤務し、ドイツ語が堪能なウラジーミル・プーチン大統領とは「いったい、何語で会話しているのか」とささやかれるほど親密であった。

メルケル政権の16年間にドイツでは「人権・環境全体主義」が蔓延(まんえん)した。国民が豊かになることよりも、偏ったイデオロギーを押し付ける手法だ。その結果、ドイツでの自由闊達(かったつ)な経済活動は抑制され、沈滞した。

例えば国家をあげて取り組んだイデオロギー優先の「全面電気自動車(EV)化」がドイツの自動車産業を疲弊させたことは明らかだ。現在EV販売が減速しているのも一時的現象ではないと思われる。

ドイツの製造業を中心とした繁栄は、ロシアからの天然ガスなど安いエネルギー供給によるところが大きかった。しかし、パイプラインの「ノルドストリーム」が爆破されたことによって、ロシアとの取引再開はかなり難しくなっている。

その追い込まれた状況の中で、昨年4月に「原発全面停止」という暴挙に出たのが、メルケル氏の後任であるオラフ・ショルツ首相である。このような、「人権・環境全体主義」が蔓延する環境で、ドイツの産業が発展するはずがない。

ドイツだけでなく、欧州連合(EU)と加盟国は「人権・環境全体主義」という「形を変えた共産主義」の、イデオロギー優先の非効率な官僚主義によって自滅しつつあるように思える。

「共産主義」がどのように国民を不幸にするのかは、ベルリンの壁やソ連の崩壊によって明らかになった。

日本はドイツやEUが「人権・環境全体主義」によって疲弊した歴史を「他山の石」として、「正しい道」を選択しなければならない。

■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

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