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ニュースの核心 日本の保守主義運動、復活は時間の問題か 安倍氏失い漂流状態 岸田首相は「ヤルヤル詐欺」で居直り…国民は気づき始めている

zakzak by夕刊フジ 2024年7月7日 10時0分

11月の米大統領選では、「不法移民対策の強化」や「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げるドナルド・トランプ前大統領が優勢だ。イタリアで開票された欧州連合(EU)欧州議会選でも、ジョルジャ・メローニ首相率いる右派政党「イタリアの同胞」(FDI)が圧勝した。欧米で保守主義勢力が躍進するなか、日本では「LGBT法の稚拙な法制化」などを受け、岸田文雄政権から「岩盤保守層」の多くが離反したとされる。安倍晋三元首相の三回忌を前に、ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、日本での保守主義運動の復活に迫った。

安倍元首相が亡くなって、まもなく2回目の7月8日を迎える。わずか2年の間に、日本は大きく様変わりした。「良い方向に」ではなく「悪い方向に」である。国を取り巻く環境は厳しさを増すばかりなのに、日本は大丈夫なのか。

象徴的な出来事が、昨年から続く政治資金スキャンダルだ。安倍氏が初めて派閥領袖(りょうしゅう)に就任した後、資金の不透明な分配を止めさせたのは、よく知られている。だが、安倍氏が凶弾に倒れるやいなや、お膝元の安倍派自体がこっそりと復活させていた。

永田町とマスコミは以来、この話でもちきりになり、激動する世界や経済への対応はおざなりになってしまった。その陰で、政策を官僚が差配する「官僚国家体制」が完全に復活した。

その霞が関が頼りになるのか、といえば、中国の駐日大使が「日本の民衆が火の中に連れ込まれる」などと恫喝(どうかつ)しても、外務省は腰砕けだった。韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件も、ウヤムヤに終わった。

経済界は、財務省の増税路線に異を唱えない。政治家、官僚、マスコミ、経済界のどれもが羅針盤を失い、日本は流れに身を任せるだけの漂流を続けているように見える。

この間、ロシアは人命軽視の独裁体制にモノを言わせて、ウクライナの反転攻勢をしのいだばかりか、逆に攻勢に転じている。イランはイスラム過激派のハマスや、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラを使って、イスラエルや米国への攻撃を続けている。中国の習近平総書記(国家主席)は台湾を虎視眈々と狙っている。

本来であれば、日本は長年の課題である憲法を改正し、通常兵力に加え、核武装も視野に入れて、自衛力を抜本的に強化しなければならない局面だ。だが、岸田政権は防衛費を拡大したものの、核論議を封印し、改憲に至っては「ヤルヤル詐欺」で居直っている。

■移民に悩まされる欧州で新たな右派

空前の円安も、以上のような惨状を反映しているのではないか。中長期的には、ドルと円の通貨量を反映するのだろうが、世界の投資家が「いまの日本はとても買えない」と考えても、当然だろう。

どこまで「日本の漂流」は続くのか。

私は悲観していない。普通の人々は気づき始めているからだ。

例えば、朝日新聞の世論調査(5月6日配信)でさえ、いまの憲法を「変える必要がある」が53%で、「変える必要はない」が39%だった。これは前年とほとんど同じだ。いまや、過半数の国民が「いまのままではダメだ」と理解している。

とりわけ問題は、政治家とマスコミである。官僚は陰に隠れて、彼らをアメとムチで操り、世論を誘導してきた。

トランプ前米大統領は、エスタブリッシュメントたちの「ディープ・ステート(陰の国家権力)が国を動かしている」と非難し、支持を集めている。移民に悩まされる欧州でも、既存の保守政党が力を失い、新たな右派勢力が伸長した。この流れは、やがて日本にも届く。

四方を海に囲まれた日本はこれまで幸い、移民の波が押し寄せてこなかったが、岸田政権は「育成就労」の名の下で事実上、本格的な移民政策に乗り出した。となれば、日本でも国家を基礎に据えた保守主義運動が高まるのは時間の問題だろう。

江戸末期には「太平の眠りを覚ます蒸気船」という狂言が流行った。今回は「太平の眠りを覚ます移民と独裁者たち」になりそうだ。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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