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久住昌之 するりベント酒 パッと昼食を済ませたい…サンドイッチとカレーパンを冷静に食べ直す 「伯爵が公案」はガセ?カレーには魔力、走者一掃の力

zakzak by夕刊フジ 2024年9月29日 10時0分

先週は岩手県大船渡~長野県軽井沢~長野県長野~佐賀県嬉野~東京都葛飾区~山梨県上野原~群馬県高崎という七日間だった。そのせいで、原稿原作仕事が溜まってしまい、パッと昼食をすませたかった。

そういう時はパンである。サンドイッチだ。これういう忙しい状況で何かしながらでも食べられるようにと、英国のサンドウィッチ伯爵が考案した、と言われているが、それはガセらしい。

それはそれとしても、買った。でもサンドイッチって、なんか物足りないですよね。なぜだろう。パンを焼いてないからか、どうもひ弱な感じがする。全然運動してない若者みたいな。

それでカレーパンを付けてみた。カレーパン、久しぶり。そういえば大好きだ。

で、仕事場にて、襟を正す気持ちで、サンドイッチを落ち着いて冷静に食べてみた。む、このサンドイッチはパンの耳を落としてない。これはいい。サンドイッチの物足りなさは、食パンの耳がないこともある。噛み応えが無い。どうも頼りない。

まずは茹で卵とキュウリのサンド。うん、うまいじゃないか。茹で卵は刻んでマヨネーズと和えてある。そこにキュウリのみずみずしさと香りがマッチしている。いつもなんとなく食べていたが、真面目に味わって食べるとなかなかいいものだ。耳が香ばしい。

さて次はハムとチーズとレタスサンド。食べてみたらマスタードの味が効いていた。レタスのシャリシャリした歯触りに続いて、ハムの味が来て、やがて口中にチーズがその存在を主張してきた。それを包むパン。ここでも耳が大切。

しみじみ味わうと、しみじみうまい。これは何も北の港で燗酒と炙ったイカでなくとも、心の持ちよう次第でしみじみする。

二種のサンドイッチを食べたが、残りの二切れも前者と同じ具だ。ここでカレーパンにタッチだろう。

カレーパンは袋から出してしまうと、食べる時に手が油になるのが難点だ。でも今日はティッシュを用意して、あえて素手で食べてみた。

ガブリ。モグモグモグ…うん、うまい!

口の周りもちょっと油になる。この「油になる」という言い方が、あえてやってしまうとなんだか心地いい。ただパンの表面のコロモ的カスはズボンや床に落とさないように注意しないとね。とくに衣服につくと致命的だ。とくにズボンの股間近くにできると、お小水染みと誤解されそうで悲惨。

でもこの揚げたパンであるところが、カレールーとたまらなく合うんだな。前にどこかで「ニューカレーパン」という揚げてないパンにカレーが詰まったのを食べたが、これがマズくはないが物足りなかった。

しかし、あらためてカレーには魔力があると思った。カレーの辛さと香りには、なんというか走者一掃の力がある。ライトフェンス直撃のライナーで一、二塁に出たサンドイッチ二人をホームに返して一挙2点。自身も二塁へ。大歓声。

カレーパンを半分食べたところで、サンドイッチに戻る。これが振り出しに戻って新たにおいしい。卵とキュウリがまた嬉しい。この食パン四つ切りがよかったな。

というわけで食事の所要時間5分だったが、なかなか満足だ。(マンガ家・ミュージシャン、久住昌之)

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