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列島エイリアンズ フードデリバリー編(1)日本人離れで「外国人不法就労」の温床に 各社規制強めるが…それでも雇う〝カイシャ〟の存在

zakzak by夕刊フジ 2024年9月11日 6時30分

外出がはばかられていたパンデミック下で、ライフラインの1つと言われるまで重宝されていたフードデリバリー(フーデリ)だが、最近、利用者から不満の声が相次いでいる。大手プラットフォーマーのウーバーイーツなどでは、注文から配達までの時間が、以前より長くなったというのだ。

配達員として働く日本人男性、A氏によれば、原因は「配達料の減額」だ。簡単に言うと、配達を1回こなして得られる報酬が、ウーバーイーツのアルゴリズム変更により以前と比べて減額され、そのせいで配達員の稼働が減少したという。同様の報酬減額の動きは、他社プラットフォームにも見られると話す。

そんななか、存在感を増しているのが外国人配達員だ。

「日本人は、本業を別に持っている人が空き時間を活用して配達を行うスポットワーカーがほとんどだった。そのため、条件が悪化すると、すぐにフーデリ配達員から足を洗って他の副業に移っていった。一方、外国人は、複数のプラットフォームを掛け持ちし、朝から晩まで配達を続け、路上でリクエストを待ち続けるいわゆる『地蔵』もいとわない。条件悪化についても、日本人配達員が減少したことを好機ととらえ、〝薄利多売〟に励んでいる。例えば、池袋駅の西口周辺では、飲食店でピックアップの際に顔をあわせる配達員の半分以上が外国人」(A氏)

ただ、2021年以降、各プラットフォームでは、フードデリバリー業界が不法就労の温床となっているという指摘を受け、外国人の配達員登録を永住者や日本人の配偶者などに限定している。にもかかわらず、いまなお多くの外国人が、配達を担っているようだ。

その理由について、ベトナム人の元技能実習生で、配達員の経験もあるフンさん(27)が明かす。

「学生や技能実習生、または不法滞在者でも、配達員として雇ってくれる〝カイシャ〟がいくつもある。カイシャは、日本人や永住権のあるベトナム人の名義で登録したアカウントをたくさん持っていて、アプリをインストールしたスマホごと貸してもらえるので、誰でも働ける。カイシャは報酬の4割程度を手数料として天引きし、残りを配達員に現金で手渡す」

皮肉なことではあるが、報酬改悪によるフーデリ業界からの日本人配達員離れは、外国人の不法就労の好機となっている怖れがある。

=つづく

外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

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