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ぴいぷる 女優・黒木華 演技のこころも〝アイミタガイ〟何だか温かくなる不思議な空気、親の笑顔が原点 歌声披露も「次はもうやりませんよ(笑)」

zakzak by夕刊フジ 2024年11月1日 6時30分

この人が笑顔になるだけで、周囲は何だか温かくなる。そんな不思議な空気をまとった人だ。

「どんな悩みであれ、誰もが悩んで生きている中で、自分では気づいていないけど、誰かとつながっていて、それが回り回って自分の助けになったり、希望になったりするような作品です。皆さんをそっと包むような暖かい日だまりのような作品になればいいな」

そう話すのは、自身が主演する11月1日公開の「アイミタガイ」(草野翔吾監督)だ。

ウエディングプランナーとして働く梓(黒木)はある日突然、親友の叶海(藤間爽子)を事故で失う。そして、恋人の澄人(中村蒼)との結婚にも踏み切れないままだ。大事なときにいつも背中を押してくれていた叶海のスマホに読まれることのないメッセージを送り続ける梓。一方、娘の死を受け止められない叶海の両親も生前の娘がどのような人とつながりを持っていたのかたどることに…。

「アイミタガイ」とは「相身互い」と書き、同じ境遇にある者どうしが同情し、助け合うことを指す言葉だ。映画では、登場人物たちの何気ない行動がパズルのようにつながっていき、見ているうちに何だか心が温かくなる。彼女も「温かい映画に出られることができて、すごいうれしいなと思います」と話す。

自身が演じた梓については、「仕事に対してすごく前向きに頑張っているところは自分と重なるかな。やっぱり私たちの年ごろになると、仕事もそうだけれど、結婚とか将来のこととか、自分だけではどうしても成り立たないことも多く、それに関わる誰かのことを考えなければならないじゃないですか。今の女性なら、おそらく共感していただけるかと」。

演劇の世界もまさに「アイミタガイ」なのだ。

「お芝居って相手の方と影響し合うからこそできるものなんです。相手の演技によって、こちらの口調や言い回しも変わるでしょうし、こちらの演技で相手の受け取り方も変わってくる。むしろ影響を受けていないとダメなぐらいかと。それこそ〝アイミタガイ〟ですよね。そして、それをなるべく逃さない役者でありたいし、共演者が楽しんでくれるような役者でありたいとは常々思ってます」

幼いころから、地域の児童劇団に所属し、多くの舞台を経験する。舞台やテレビ、映画で活躍し、2014年には映画「小さいおうち」(山田洋次監督)でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)に輝くなど、その活躍ぶりはいうまでもない。いったい演技のどこに魅せられているのだろうか。

「幼いころは、親にほめられるのがすごくうれしかったんですよね。幼稚園のころかな。この自分の演技を喜んでくれる人がいるっていうことがうれしくて。最初はそういうところからでした。そこからだんだんと面白さに気づいていくといいますか…。その魅力というのは、いろんな人の人生を疑似体験できるっていうところなんだと思いますね」

実は本作のエンドロールで流れる「夜明けのマイウェイ」はシンガー・ソングライターの荒木一郎が作詞作曲を手がけた1970年代の名曲だが、今回はなんと彼女が歌っている。もともと歌う予定だったのか。

「いやいや、撮影が終わってから監督に言われて、急に歌うことになったんですよ。もちろん最初はいやだって断りましたよ。でも、やらざるを得なかったんです(笑)。歌のプロではないので、歌唱指導の先生に助けていただいて、なんとか形になったって感じですね。え、次また、歌の話が来たら…って、今度は言われてもやりませんよ(笑)」

■黒木華(くろき・はる) 女優。1990年3月14日生まれ、34歳。大阪府出身。京都造形芸術大学在学中の2010年にNODA・MAP公演「ザ・キャラクター」にアンサンブルとして初舞台を踏む。同年9月のNODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」で娘役オーディションを経て野田秀樹、中村勘三郎との3人芝居でヒロインの娘役で舞台に立った。その後は、「小さいおうち」(14年)でベルリン国際映画祭銀熊賞を日本人最年少で受賞するなど数多くのドラマや映画で活躍を続けている。今年はNHK大河ドラマ「光る君へ」にも出演。現在、映画「八犬伝」が公開中。

ペン・福田哲士 カメラ・酒井真大

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