衆院選で大敗した自民党だが、石破茂首相は続投に意欲を見せている。今後、石破政権はどこまで生き延びることができるだろうか。
自民党内や地方組織からも「石破おろし」が始まっている。かつて石破首相は、第1次安倍晋三政権や麻生太郎政権の時、国政選挙で負けたり、支持率が低迷したりしたとき、退陣を求めている。今回自分だけをかわいがるのは誰の目から見てもおかしい。
小泉進次郎氏が選対委員長を辞任したが、問題がそれにとどまるはずはない。小泉氏の辞任を石破首相は認めたというが、責任を部下に押しつけるようで、これが組織トップの在り方なのか疑問だ。かつて安倍元首相が、「石破氏だけは首相にしてはダメだ」と言っていたのもよく分かる。
新聞各紙の社説も石破首相に責任を取ることを求めている。朝日新聞は「選挙の結果責任を負うのは、本来、トップ」、毎日新聞は「政権トップとしての首相の責任は重大」、読売新聞は「速やかに進退を決することが憲政の常道」、産経新聞は「直ちに辞職し新総裁選出を」としている。
石破首相自らが、勝敗ラインを「自公で過半数」と明言した。これは普通ではあり得ないほどの低いハードルであるが、実際には自公で215議席と過半数を18も下回ってしまった。無所属の追加公認を入れても、到底過半数には及ばない。
衆院選の結果は政治家にとって最も重いものだ。それを、ゴールポストを動かしてはいけない。筆者はこうした状態を揶揄(やゆ)して「石にかじりつきたい破れかぶれ石破政権」とポストした。
すでに、水面下で首相指名に向けた多数派工作が与野党間で繰り広げられている。当初11月7日に想定されていた特別国会の召集日を11日以降に延期する交渉が行われている。憲法では衆院投票日から30日以内に特別国会を召集し、内閣総辞職、首相指名が行われる。つまり、特別国会の召集日は首相指名の帰趨(きすう)を占う意味でも重要なのだ。
石破政権の寿命はまず、特別国会では内閣総辞職、首相指名が行われるので召集日までだ。
そこから生き延びることができるのは、首相指名で1位を確保できる場合だけだ。石破首相では選挙ができないとする参院議員、不条理な制裁を食らったが選挙を生き延びてきた旧安倍派、総裁選で高市早苗前経済安保相を推した麻生派、旧茂木派は「石破おろし」を起こす可能性があり、石破首相側にいた人も反旗を翻すかもしれない。
そうなると、特別国会の召集日までに自民党内で両院議員総会を開いて、石破氏を引きずり下ろすだろう。自民党はモタモタしていると、首相指名の多数派工作でまとまりにならず、野党が主導権を握ってしまう恐れもある。
高市氏が「党執行部には今の自民党を徹底的に立て直していただきたい」としたのは当然だ。このまま、石破首相が居座りを続けると、自民党が衆院選で負けて、党再建でも負けて、ぶっ壊れてしまう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)