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ニュース裏表 有元隆志 安倍元首相三回忌法要 いくら願っても戻ってくることはない安倍氏 拉致解決、憲法改正が残されたわれわれに課せられた責務

zakzak by夕刊フジ 2024年7月5日 6時30分

2022年7月に暗殺された安倍晋三元首相の三回忌法要が6月30日、東京・芝公園の増上寺で営まれた。参列者の一人として読経が響くなか、安倍氏との思い出を振り返った。

安倍氏に初めて会ったのは02年7月だった。産経新聞官邸クラブキャップになったばかりで、小泉純一郎内閣で官房副長官を務めていた安倍氏にあいさつした。はつらつとしていた印象だった。当時の官邸クラブは、サブキャップが阿比留瑠比記者、安倍番は石橋文登記者、総理番は田北真樹子記者らと個性的な布陣である。

何事もない夏かと思いきや、小泉首相は水面下で「北朝鮮訪問」を計画していた。8月30日朝、社会部の加藤達也記者から「小泉さんが訪朝を計画しているらしいです」との一報が届き、確認に追われた。

安倍氏もこの日まで計画を知らされていなかった。小泉首相から訪朝を伝えられた安倍氏は「平壌(ピョンヤン)に同行するよう言われた」と明かした。

私たちにとって、韓国紙に特ダネを抜かれた苦い思い出であるとともに、安倍氏との結束を強める契機ともなった。

帰国した拉致被害者5人を北朝鮮に戻そうとする動きに、断固反対したのが安倍氏や中山恭子内閣官房参与らで私たちも同調した。「5人を戻すのか」と追及する阿比留記者の質問に、別の方向を向きながらいやいや答える福田康夫官房長官の姿は印象的だった。

結局、5人は日本で家族の帰国を待つことになった。

田中均外務省アジア大洋州局長の言う通りに、5人を北朝鮮に戻していたら二度と帰って来られなかっただろう。

訪朝をめぐり蚊帳の外だったことに安倍氏も内心じくじたる思いだった。それを挽回して主導権を取り戻した行動力は目を見張るものがあった。これは安倍氏が衆院議員になる前から拉致問題に関心を持ち、被害者家族らとの信頼関係を築いていたからこそ実現できたことだった。

あれから22年の歳月がたった。

菅義偉前首相も三回忌法要後の直会(なおらい)の席上、「2年を振り返ると、長かったと思うときもあれば、なぜこんなに短いんだろうと、いろいろ考えながら過ごしてきた」とあいさつしたが、皆が同じ思いをしているのではないか。

私自身、月刊「正論」増刊号『不屈の政治家 安倍晋三』のグラビアを見た酒巻俊介カメラマンの提案を受け、何かに憑りつかれたように、東京と大阪、安倍氏の地元・山口県下関、台湾の台北、山口県とも縁が深い台南の5カ所で「安倍晋三写真展」を開催した。多くの方が来場し、在りし日の安倍氏の写真に見入っていた。

昭恵夫人が直会の最後に言われたように、いくら願っても安倍氏が戻ってくることはない。安倍氏が望んだ「拉致問題の解決」「憲法改正」などに取り組むことが、残されたわれわれに課せられた責務であろう。

今回から、かつて1年間働いた夕刊フジで連載を担当することになった。夕刊フジでは政治部とは違った角度から永田町・霞が関を見ることができ大変勉強になった。しばらくお付き合いいただきたい。

(産経新聞特別記者・有元隆志)

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