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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 子供による大人狩りの実態…「アメリカの文化的緊張」予見し再評価 S・キング原作の映画「チルドレン・オブ・ザ・コーン<4K>」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月12日 10時0分

日本未公開だったという。

ホラー作品を生み続ける作家、スティーブン・キング原作の映画「チルドレン・オブ・ザ・コーン<4K>」が16日に公開される。

公開当時(1984年)は権威的批評家にダメ出しを食らった作品で、ツッコミたくなる雑さは映像が美しくなろうがそのまま変わらない。

一方、ローリングストーン誌が2019年、スティーブン・キング映画トップ30の第7位に選ぶなど、再評価の面もある。アメリカが抱える取り残された地域性、カルト宗教に洗脳される子供たち、分断された世代対立といった文化的な緊張が作品の武器になっていることを、同誌は再評価につなげた。

舞台はアメリカは中西部、ネブラスカ州の田舎町ガトリン。とうもろこし畑に囲まれた、さびれた町に、青年医師と恋人が迷い込んでしまう。

どこまで行っても、道の両側にとうもろこし畑が続く。退屈なドライブに気を抜いていると、目の前に人影が…。ブレーキを踏んでも間に合わなかった。様子を見に行くと、自動車事故による傷ではない致命傷を医師は見抜く。死体をトランクに乗せ、警察に届けるために車を走らせるが、まるでダンジョンに迷い込んだかのように一帯から抜け出せなくなってしまう。

国土の広さが怖さにつながる。ガソリンスタンドがない。公衆電話もない。グーグルマップもない時代に頼れるのは紙の地図だが、経路が示されるわけではない。

人通りのない道、廃屋化した家々はまるで死の町。医師と恋人はそれでも人探しを続け、結果、カルト集団の洗脳を受けていない2人の子供を発見する。彼らは親が作っていたという核シェルターの中で生き延びていたのだ。

2人の口から明らかになる、3年前に起きた子供による大人狩りの実態、とうもろこし畑で悪魔的な宗教的儀式…。

神の声を聞き伝えられるという少年が指導者=少年教祖としてまつられ、他の子供たちを暴力で支配する恐怖。とうもろこし畑は彼らの目隠しとして機能し恐怖を倍加させていくが、最後はとうもろこし畑のお化け退治みたいになって、80年代のB級ホラーのチープ感全開で終わる。これもまたよし。 (演芸評論家・エンタメライター)

渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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