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〝解散〟変節、石破内閣に大逆風 村上氏「国賊」発言正当化、安倍路線の否定・決別に「旧安倍派」激怒 支持率は「一度落ちると止まらない」

zakzak by夕刊フジ 2024年10月2日 11時35分

石破茂首相は2日、就任から一夜明け、官邸で職務を開始した。自身の内閣を「納得と共感内閣」と名付けたが、さっそく、「不満」や「反発」が噴出している。石破首相は1日の記者会見で、「9日の衆院解散、27日投開票」の衆院選を表明したが、総裁選で「予算委員会」審議を語っていただけに、野党は「論戦から逃げた」「敵前逃亡内閣だ」と一斉に批判した。さらに、安倍晋三元首相への「国賊」発言を一度は謝罪した村上誠一郎総務相が1日、「正論を言い続けた」と強弁したため、旧安倍派などの保守派は激怒した。「論功行賞」「情実人事」と指摘される石破政権をめぐり、「深刻な分断」が生まれつつある。世論調査では早くも不穏な兆候が示された。

「私は感情で発言したんじゃない。ずっと正論を言い続けたつもりだ」

村上氏は1日、国会内で記者団にこう語った。2022年、参院選の街頭演説中に凶弾に倒れた安倍氏を「国賊」と罵(ののし)り、自民党の役職停止1年の処分を受けたことを聞かれ、自身を正当化したのだ。

さらに、最近の株価の乱高下や急激な円安についても、「残念ながらアベノミクスの負の遺産だ」と言い切った。自民党総裁選で石破首相が勝利した直後、株価先物が暴落し、円高が加速したことは無視するのか。

村上氏は、石破首相と政策などを通じて近く、2020年と今回の総裁選では推薦人に名を連ねた盟友である。『自民党 失敗の本質』(宝島社新書)という共著もある。

石破首相周辺は「首相と村上氏が一体として見られる。反省が伝わらず、今後の火種になりかねない」と危機感が広がる。

ちなみに、前著の共著者には、立憲民主党の小沢一郎衆院議員や、元文科事務次官の前川喜平氏、東京新聞の望月衣塑子記者らもいる。

村上氏は、総務相就任の呼び出しを受けて首相官邸に訪れた際、記者に同じ質問をぶつけられて苦笑しつつ、「遺族に謝罪しましたし、役職停止になった。もう終わりなんで。そのことにはいい加減、少しは考えてください」と注文をつけた。

ならば、石破首相が事実上、次期衆院選に絡めて「派閥裏金が表面化した議員の再処分」を検討していることにも「一事不再理に反する」と諫言してはどうか?

旧安倍派の議員は、次のように怒りを爆発させた。

「石破政権の本質は『安倍路線の否定、決別』だ。村上氏の発言で確信した。村上氏は、安倍氏の国葬にも反対しており、国賊発言について『正論を言い続けた』と語ったのは本音だろう。国家観や政策論に違いはあっても、人格を否定する発言は絶対に許せない。言語道断だ」

野党は早くも全面攻撃の構えだ。

石破首相は総裁選で、「国民に判断いただく材料を提供するのは政府の責任であり、新しい総理の責任だ」「本当のやりとりは予算委員会」「『すぐ解散します』という言い方は、私はしません」と語っていた。

ところが、就任からわずか8日後に衆院解散に踏み切ろうとする石破首相の姿勢が「論戦から逃げた」「国民への裏切り」などと批判を受けているのだ。

立憲民主党の野田佳彦代表は「議論に向き合う政治家だと思っていた。深く失望した」「新内閣を評価しようがない」と語った。

日本維新の会の馬場伸幸代表も「敵前逃亡内閣だ」と記者団に指摘。石破氏が首相就任前の9月30日に衆院選日程を表明したことについて、「憲政史上に汚点を残す」と非難した。

有馬氏「支持率は一度落ち始めると止まらない」

国民民主党の玉木雄一郎代表は「石破首相が自民党を変える前に、自身が変わってしまった」と強調した。

世論調査では、期待した〝ご祝儀〟もなかった。

総裁選直後の28、29両日に行われた毎日新聞の調査では、石破新総裁に「期待する」は52%で、「期待しない」は30%だった。

石破首相周辺は「低すぎる。70%ぐらいは行くと思っていた」とショックを隠せなかった。

石破政権への大逆風をどう見るのか。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「石破首相は議論を大事にする姿勢が支持されていたが、党内の『今しか勝てない』と主張する早期解散論者に押され、判断が揺らいだ。そもそも、総裁選では岸田文雄前首相に『政策を継承する』と接近し、距離のあった麻生太郎最高顧問にも擦り寄った。石破首相に世論が否定的なのは、『孤立しても筋を通してきた姿勢が変質した』と受け止めているからだ。石破首相は早くも正念場だ」と指摘する。

早期の解散・総選挙に打って出る石破政権に勝機はあるのか。

政治評論家の有馬晴海氏は「国民は、石破首相の総裁選以降の動きを『裏切り』と受け止めている。早期解散を主導したのは森山裕幹事長だ。総裁選の余韻が残るうちが勝機とみて、裏金事件が表面化した議員の評価も『国民の審判』に託すという戦略だ。ただ、石破首相と小泉進次郎選挙対策委員長が『選挙の顔』として通用するかは疑問だ。政策論や筋の通し方で、国民の疑念が広まるのは早い。報道各社はすでに『国会軽視』『熟議の石破はウソ』との評価を始めている。支持率は一度落ち始めると止まらない。石破政権は厳しい先行きになるだろう」と語っている。

早くも猛批判にさらされる石破首相。今後のかじ取りが注目される。円内は村上総務相

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