2025年がスタートした。今年の一大イベントといえば、4月13日から開幕する大阪・関西万博は外せない。ということで〝万博〟といえば、この人しかいない。ジャーンとギターを弾いて、さっそうと登場。
「55年前、11歳のときですか、万博で本当に人生が決まったというか。11歳であれをみたっていうことが、人生にとっては大きすぎましたね。よくこれまでのインタビューでも、将来の夢は万博になりたいって言うてましたから(笑)」
〝万博愛〟が高じて、昨年末に「大阪・関西万博エキスポ~港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ~」(キング)を配信リリース。タイトル通り、大阪・関西万博を歌った替え歌だ。
そしてダウンタウン・ブギウギ・バンドの名曲がもとになっているのはもちろんのこと。サビの「大阪・関西万博エキスポ」が「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のフレーズにぴったりはまっているのだ。ぜひ頭の中で歌ってみてほしい。
「最初はオリジナルメロディーも考えたんですよ。でも昨年3月のライブに宇崎竜童さんが出てくれて、これはもう〝港のヨーコ〟しかないなと思いました。実は最初に弟子入りした笑福亭鶴光師匠もこの曲を関西弁でカバーしてるんです。〝あんた、あの子の何だんねん〟って。これも何かと縁なのかなと」
1番では1970年の万国博覧会の思い出を歌い、2番は大阪らしくギャグを連発、3番は食い道楽のなにわグルメをてんこ盛り、そして4番で55年ぶりの万博を紹介するといった具合だ。
「笑いはギャグを詰め込んで、でも吉本の芸人さんだけじゃなくて、いろんな人の決めフレーズをね。食べもんも前の万博も、今度の万博もちょうど曲にはまったんです」
1970年の大阪万博ではなんと21回も会場に足を運び、世界各国のピンバッジを64個も集めたほどの万博マニア。
「会場跡にいくと、もう太陽の塔と鉄鋼館ぐらいしか当時の記憶は残ってないけど、僕には今でもそこにパビリオンが見えるんです(笑)。あそこはリコー館のあったとこで、奥が繊維館みたいな感じ。今は木々に覆われてるけど、どこに何のパビリオンがあったのか、明確にわかりますよ」
前の大阪万博の何が、そんなにタツオ少年の心をとらえたのだろう。
「今ほどホテルもないから、親戚も泊まりに来るでしょう。そしたらまた連れていってもらってね。学校へ行くと、〝昨日万博行ったら、ニュージーランド館でパイナップルもらえたらしい〟とか新情報を入手してくるやつがいて。毎日そんな感じで。次はどこそこのナショナルデーやとか。それも面白かったけど、やっぱり子供ごころにはバッジ集めやったね」
そんな万博マニアは、今度の万博をどう見ているのだろう。
「面白くなると思いますよ。取材で、万博が今ひとつ盛り上がってないので、もうちょっと頑張れみたいなコメントを求められたことがあったんですが、どんな博覧会でも始まってから加速していくものやからね。パビリオンやって、ものすごく考え抜かれてるから。前の万博を超える、超えないって表現は変かもしれませんけど、どうでしょうね…超えそうやとは思いますよ」と期待を込める。
さて携帯電話や動く歩道、人間洗濯機といった最先端のテクノロジーで未来の日本の姿を描いた前の万博から55年。果たして今の日本はよくなったのだろうか。
「良くなっているんとちゃうかな。あのとき描いていた未来像はあながち間違ってはいない。ただ、やっぱり人間も進まないといけないからね」
一番窮屈になったのはコンプライアンスが厳しくなって、替え歌も難しくなったことかも。
「ちょっと前やと、ブスとかブタとかハゲとか足短いとか言ってたけど、今はそうもいきません。ただ、それを逆手にとって〝30年前と違って今はコンプライアンスが厳しいので作り直しました〟って歌詞に入れることもありますよ」
そしてここ数年で盟友でもあった笑福亭笑瓶さんと桂雀々さんを相次いで失った。
「3月にでる新しいアルバムでは笑瓶のことを『バイバイ笑瓶ちゃん』という歌にしています。雀々のこともいずれ歌にしないとあきませんね。作ることが、自分の役目やと思ってますんで。そう作らんとあかんね」
■嘉門タツオ(かもん・たつお) シンガー・ソングライター。1959年3月25日生まれ、65歳。大阪府出身。75年、高校在学中に笑福亭鶴光に弟子入りするも80年に破門。その後、「嘉門達夫」として「MBSヤングタウン」のパーソナリティーに。83年に「ヤンキーの兄ちゃん」でレコードデビューを果たす。「替え歌メドレー」「小市民」「鼻から牛乳」などヒット多数。2017年に「嘉門タツオ」に改名した。3月19日に新アルバム「至福の楽園~歌と笑いのパラダイス~」をリリースする。
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ライブツアー「至福の楽園~歌と笑いのパラダイス~」は3月22日=東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURA▽3月30日=大阪・なんばHatch▽4月12日=名古屋・ボトムライン。
ペン・福田哲士 / カメラ・安元雄太