音楽にはそれぞれの国の歴史がある。日本なら民謡に始まり演歌歌謡といった感じか。戦後は欧米のポップスの影響を受けている。
ちなみに唱歌は明治期に米国から入った賛美歌をもとに多くつくられたそうだ。そんな文化の流れがミックスされて現代の流行歌も創作されたように思う。
サザンオールスターズの桑田佳祐には彼自身の流儀があるようだ。タイトル、歌詞は言葉のブレンド、コンビネーションが実に巧みである。
10代の頃から、広範囲に洋楽を聴き、姉のピアノを聴いてハーモニーを覚え、歌謡曲も聞いている。しかし、自身の音楽の中心には、〝必ずビートルズがドーンと居座っている〟と過去に雑誌に記すなど、何かにつけてビートルズの存在を語っている。
そして、ビートルズの「抱きしめたい」「涙の乗車券」「ひとりぼっちのあいつ」といったタイトルについて〝邦題の方がスカッとするし、グッとくるし、イカしている〟とも語っている。
そんな桑田も多くの歌手から楽曲の依頼をされている。
中村雅俊に提供した「恋人も濡れる街角」(1982年)のタイトルについて、「名曲には名タイトルあり、あまり悩むことなくつけられたタイトルほど楽曲の出来栄えはいい」とある雑誌に記している。
最近では、サザンの大ファンだという演歌歌手の坂本冬美から直々の依頼の手紙を受け取り、彼女の50枚目のシングルとして「ブッダのように私は死んだ」(2020年)を提供している。桑田の楽曲提供は23年ぶりだった。
後日、桑田は「この時代に、彼女がオレに求めているのは単なる仕事を超えたもの」と記している。刺激的なものを求めた結果が、この曲に結びついたというわけだ。
結果、この楽曲はオリコンの週間チャートで12位にランクインした。
■桑田佳祐(くわた・けいすけ) 1956年2月26日生まれ、68歳。神奈川県出身。サザンオールスターズで78年にデビュー。来年1月から全国ツアーをスタートさせる。
■篠木雅博(しのき・まさひろ) 株式会社「パイプライン」顧問、日本ゴスペル音楽協会顧問。1950年生まれ。東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)で制作ディレクターとして布施明、五木ひろしらを手がけ、椎名林檎らのデビューを仕掛けた。2010年に徳間ジャパンコミュニケーションズ代表取締役社長に就任し、Perfumeらを輩出。17年に退職し現職。