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ぴいぷる 医師・安川康介 何歳からでも「学ぶ」は楽しい 100本以上の学術論文まとめた…米国内科専門医が実践する〝究極の学習術〟が大反響

zakzak by夕刊フジ 2024年8月8日 11時0分

著書「科学的根拠に基づく最高の勉強法」が大反響

教科書や参考書の内容をノートに書き写したり、蛍光ペンでハイライトを入れたりといった勉強法に身に覚えのある人は、実は要注意だ。医師として米国の病院で働くこの人いわく、そのスタイルで得られる効果は少ないと科学的に立証されているらしい。

「ノートにきれいにまとめようとしたり、線を引いたりして勉強した気になるより、『アクティブリコール』のほうが効果が高いと、学習に関する多くの研究で明らかになっています」

「アクティブリコール」とは学んだ知識を記憶から引っ張り出そうとアウトプットしていくこと。テストの練習問題を解く以外にも、覚えたことを白紙に書き出してみたり、学んだことを通勤電車の中で思い出そうとしたりすることも含まれるのだという。

昨年、自身のユーチューブチャンネルに「最高の勉強法・効率的な覚え方」と題した解説動画を投稿したところ、大反響を呼んだ。

「受験とか特定の資格試験対策だけじゃなく、新しく得た知識を定着させるためにどういう方法がいいかというものです。『アクティブリコール』のほかに、時間をあけて繰り返し学習する『分散学習』も効果的です」

子供の頃から勉強に夢中だったというわけではないものの、「人の役に立ちたい」という願いを抱いていた。学ぶ意義を感じられずにいた高校時代に、「学んだ知識を直接誰かの役に立てることができる」と医師の道を志すようになり、慶応義塾大学医学部へと進学。日本と米国、両方の医師国家試験に合格した。

「病棟での実習が終わった後に日本語と英語、それぞれの問題集に取り組んで勉強していました。米国の試験を受けたのは医学部の卒業式の前日で、無事に上位1%という高得点で合格することができました。そこまで成績がよかったのは、効果的な勉強ができていたからだと思います」

渡米してからは臨床医として病院に勤務し、コロナ禍も経験。過酷な命の現場に携わる中、知識を共有するための活動を始めた。

「病院での仕事以外で、医者として何かほかにも役に立てることはないかとたどり着いたのが、ユーチューブでの情報発信だったんです。誰もが不安で苦しい思いをしたコロナ禍では、世界規模で偽情報なども拡散されていたので、分かっている正確な情報を伝えたかったんです」

コロナ禍が落ち着いたタイミングで、勉強法の動画を投稿し、これをきっかけに出版社からラブコールが届いた。今年2月に著書『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(KADOKAWA)を発表。自身の経験を踏まえ、根拠となる代表的な論文を紹介しながら科学的に効果の高いとされる勉強法を解説した1冊だ。

「最初は断っていたんです。私よりも適任がいるんじゃないかと。ただ本を作るプロセスを知りたくなって、お引き受けしました」

執筆にあたっては、40冊以上の本と100本以上の学術論文を読み込んだという。

「僕の本を読んだ人が実践しやすいように、論文などに書かれている内容を分かりやすくまとめる作業を繰り返しました。勉強をしてきたという自負はあるものの、学習の専門家じゃない医者が書くことになるので、最初は批判されるかと思っていました。おかげさまで、さまざまな人からポジティブなコメントを多くいただけたので、うれしかったですね」

勉強を、試験のためなどではなく「知の探究」と位置づけている。だからこそ、何かを学びたいと考えるすべての人に役立ってほしいという思いを込めた。

「以前に勉強して忘れていたことでも、年齢を重ねてから振り返ってみると、また新しい発見があります。どの年齢でも学ぶことは楽しいし、大切。すでにインターネットの普及で学びやすい環境になっていますし、これからはAIを使った学習も伸びていくかもしれません」

自身も新たな知の探究に心をときめかせている。

「自分の知識や経験を共有する活動は、今後もしていきたいです」と笑顔を見せた。

(ペン・磯西賢/カメラ・酒巻俊介)

■安川康介(やすかわ・こうすけ) 医師。1982年5月4日生まれ、42歳。兵庫県出身。2007年、慶応義塾大学医学部卒。日本赤十字社医療センターで初期研修後、渡米。米ミネソタ大学医学部内科研修、テキサス州ベイラー医科大学感染症研修修了。米国内科専門医・米国感染症専門医。南フロリダ大学医学部助教。2児の父。

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