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トップ直撃 「mixi」「モンスト」で市場席巻、サプライズが最優先!の経営方針、スポーツ事業でビジネス拡大 MIXI・木村弘毅社長

zakzak by夕刊フジ 2024年11月12日 6時30分

MIXI(ミクシィ)は2000年代に祖業のSNS「mixi」、10年代にスマホゲーム「モンスターストライク(モンスト)」で市場を席巻した。20年代に注力するのがスポーツ事業で、プロバスケットボールBリーグの「千葉ジェッツ」と千葉県船橋市のホームアリーナ「LaLa arena TOKYO―BAY」を一体経営している。「モンストの生みの親」でもある木村弘毅社長(48)は、各事業は「コミュニケーション」という点で共通していると話す。そして「ユーザーサプライズファースト(ユーザーの驚きが最優先)」が経営の指針だと強調する。

スポーツ事業でビジネス拡大

――スポーツ事業に力を入れていますね

「SNS、ゲームと取り組んできて、次の成長領域として思い立ったのがスポーツです。日本のスポーツのマーケットを見たときに、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいなかったり、ビジネスモデルも欧米と比較してまだまだやれていないことが多かったりで、伸びしろが大きいと考えました」

――千葉ジェッツとホームのアリーナを一体で運営しています

「ソフトとハードの一体経営はアメリカなどでは主流になっていますが、日本でできているところは多くありません。それぞれ連携することで演出やホスピタリティー(おもてなし)がグレードアップできます。会場で流れる映像も自分たちで作るなど、最新の技術を使うことで質の高いものを目指しています」

――Bリーグの人気もすっかり定着しました

「驚くほどバスケットボール人気が上がっています。男女とも予選を突破してパリ五輪に出たことも大きかったですね。千葉では日本代表メンバーの富樫勇樹選手と渡邊雄太選手のプレーが見られることも期待につながっています」

――スポーツ事業は全体の売上高の23%に達しています

「最終的には3分の1ぐらいを占めるようなバランスになったらいいなというのがありますね」

インドとAIでさらなる成長

――SNSの「mixi」、ゲームの「モンスト」、そしてスポーツと異業種のビジネスを成功させていますが、次は何を狙いますか

「いま注目している2大ワードが『インド』と『AI(人工知能)』です。インドの場合、人口が約14億人いて増え続けています。しかもスマホの普及率が5割を超え、人口とITの環境が整っています。たとえば『モンスト』をどうアレンジすればいいかなどを考えています。また、インドのベンチャーなどに最大75億円の投資をすると発表しています」

――AIへの取り組みは

「AIは大きく生産性を上げるだけではなく、アプリケーションの領域にも入ってくることで、今までのインターネットのサービスと全く別の高いクオリティーのものが提供できると考えています。われわれのパワフルなエンジニアたちがAIも使えるようになることが近道なので、リスキリング(学び直し)を始めています」

――2022年に社名と企業ロゴを変えました

「MIXIと大文字にして、赤とオレンジの『エモーションバー』を入れました。『熱い気持ち』と『温かな気持ち』が込められています」

――今後の目標は

「一つはグローバル企業になっていくということですね。日本は人口減少というリスクがありますが、世界に目を向けるとまだまだ人々のコミュニケーションを良くすることができるという思いもあります。日本のIT企業がグローバルで成功したケースになれれば、日本の経済全体にもエールになると思います」

――日本企業が海外で勝負するには

「モンストは競争環境の激しい日本でトップタイトルとして磨かれてきたので、面白さを含めて非常にレベルの高いことをやっています。ゲームにかぎらず日本酒やフードカルチャーなど、海外に届けていくと高く評価してもらえるものは、たくさんあると思っています」

飢餓状態で会食!?

【習い事】小学校時代はほぼ「週7」で習い事をしていたという。

「学習塾、書道、絵画、英会話、水泳、ボーイスカウトなどいろいろです。親は全部やらせてくれて本当にありがたかったですね」

その後の仕事に生かされたこともあるという。

「絵画など芸術を習っていたのは、スマホゲームを作るうえで、多少絵心があったり、全体の構成を作ったりする際に役に立ちました。絵画を習っていなかったらモンストは生まれていなかったかもしれません」

【モバイル】大学を中退して家業の会社を手伝った後、携帯電話のコンテンツを手掛ける会社に入った。

「携帯電話のインターネットは面白い、絶対に化けると確信していました。『打倒ミクシィ』で頑張ったこともありましたが、ミクシィがモバイル版のSNSを出したことで勝敗が決して、ミクシィを3回受けて途中入社しました」

【ゲーム】「当時の事業部長からゲームを作るように言われました。最初はmixiのプラットフォーム上で動くゲームを調達していたんですけど、アイデアが湧いてきて、自分で作るようになりました」

【家族】妻と8歳、5歳の男児。

【手放せない品】フランスの「DANTON(ダントン)」のワークシャツ。「身幅がゆったりしていて楽なので会社でも5、6枚を着回しています」

【1日1食】「朝にヨーグルトを食べたり、昼にナッツを食べたりはしますが、食事は夜だけですね。夜は会食が多いので、より自分の喜びに転換できるように、〝飢餓状態〟で臨むことにしました」

【座右の銘】《ユーザーサプライズファースト》

「モンストよりも、僕が発明した一番のものかもしれません。『ユーザーファースト』だと、お客さんに答えを聞きに行ってしまう。まだ顕在化してないニーズに対して新しく提案するのがプロの仕事だと思うんですね。怒られてもいいので、驚きのある提案をするということです」

【これまでの仕事の最高の瞬間】モンストがスマホアプリの売り上げ世界一になったとき。

【もし今の仕事についてなかったら】「物理学者になりたかったですね」

木村弘毅(きむら・こうき)1975年12月生まれ、48歳。東京都出身。東京都立大学工学部中退。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士号取得。モバイルプロダクション、インデックスを経て2008年ミクシィ(現MIXI)入社。12年プロダクト開発部プロダクトオーナー、13年モンストスタジオプロデューサー、14年執行役員、15年取締役、18年6月代表取締役社長。22年4月から代表取締役社長上級執行役員。

【会社メモ】「家族アルバム みてね」などライフスタイル事業、スマホゲーム「モンスターストライク」などデジタルエンターテインメント事業、公営競技や千葉ジェッツ、FC東京などスポーツ事業を手掛ける。本社・東京。1999年イー・マーキュリー設立、2006年ミクシィに商号変更、東証マザーズに上場。20年東証1部(現プライム市場)へ市場変更。22年現社名に変更する。24年3月期の連結売上高1468億円、当期純利益70億円。連結従業員数1645人(24年3月末時点)。

ペン/中田達也 カメラ/酒巻俊介 レイアウト/吉村剛

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