米誌タイムが12日に発表する毎年恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」にドナルド・トランプ次期大統領が選ばれるとニュースサイト、ポリティコが報じた。トランプ氏は来年1月の就任前に、ロシアのウクライナ侵略で続く戦争の終結を目指して各国首脳と会談するなど、外交を本格化させている。一方、日本の石破茂首相はトランプ氏の早期会談を実現できないままだ。こうしたなか、フジテレビと産経新聞が11日夜、安倍晋三元首相の昭恵夫人が今週末にも訪米し、トランプ氏と会談する方向で調整していると報じた。石破首相は安倍政権時代、後ろから弾を撃ち続けた人物である。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、石破政権下で高まる「日本の危機」に迫った。
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トランプ氏が7日、パリで開かれたノートルダム大聖堂の再建を祝う祝典に参加したのを機に、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。これで、石破首相はトランプ氏から排除された事実がはっきりした。
最重要な同盟国である米国の大統領に会えないようでは、石破首相が何を語ろうとも、日本の将来は危うい。
石破首相は11月、南米訪問の帰途に米国に立ち寄って、トランプ氏との会談をもくろんでいたが、実現しなかった。その際、首相周辺は「大統領は就任前に外国首脳とは会わない法律(ローガン法)がある」と説明していた。
ところが、実は会っていた。今回だけではない。アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領とはフロリダで開かれた祝賀会で顔を合わせ、カナダのジャスティン・トルドー首相や、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相とも会談している。
「法律がある」というのは、建前にすぎなかったのだ。
なぜ、トランプ氏は石破首相と会わなかったのか。
理由は明白だ。会う価値がなかったからだ。トランプ氏がパリで3者会談に応じたのは、ウクライナ停戦の可能性を探るためだった。ゼレンスキー氏は「生産的な会談だった。公正な平和が必要だ」と語っている。
ゼレンスキー氏はその後、ドイツの野党指導者と開いた会見で、「外交的解決を探る」と語り、NATO(北大西洋条約機構)に加盟するまでの間、停戦を監視する「外国軍の駐留案」まで口にしている。トランプ氏との会談が下敷きになったのは明らかだ。
マクロン氏はウクライナ支援の継続を強く訴えており、停戦を模索するトランプ氏とは距離がある。それでも会談したのは「意味がある相手」だったからだ。ようするに、トランプ氏にとっては、会う価値がある相手なら会うが、なければ会わない。それだけの話なのである。
石破首相が「アジア版NATO創設」のような、日本が憲法を改正しなければ実現できない政策を掲げているのは、周知の事実だ。トランプ氏は石破首相が自分の盟友だった安倍元首相の「政敵」だったことも承知している。
石破政権は「中国の暴発を誘発する促進剤」
来年3月末に来年度予算案が成立すれば、「石破おろし」が始まる可能性も高い。そんな石破首相に「会う価値はない」と見たに違いない。石破首相は結局、トランプ氏に会えない状態が続くのではないか。
そうなったら、日本にとって一大事だ。
中国は「日米同盟が揺らいでいる」とみて、大攻勢を仕掛けてくる可能性がある。すでに、その兆候はある。
中国は日本人に対する短期ビザの免除再開を決めた。日本を米国から切り離すチャンスとみて、アメをぶら下げたのだ。逆にムチもある。中国は台湾周辺に100隻規模の軍艦などを展開し、軍事演習を開始する構えを見せている。この機に乗じて、日本と米国を牽制(けんせい)する意味もあるだろう。
トランプ氏に見捨てられたも同然の石破政権は「中国の暴発を誘発する促進剤」になっているのだ。
慌てた石破政権は、安倍元首相の妻、昭恵夫人を米フロリダ州のトランプ氏の別荘に派遣して、トランプ氏と面会する可能性を探っているようだ。政敵の妻にすがるとは、まさに「なりふり構っていられない」政権の情けなさを示している。
このまま石破政権が続けば、「台湾危機」という「日本の危機」が訪れるかもしれない。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。