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テレビ用語の基礎知識 米大統領選は「バイバイデ~ン」に 画が弱すぎ「ズッコケる映像」多さに〝勝負あった〟踊らされた世間「ニュース映像は怖い」

zakzak by夕刊フジ 2024年7月25日 11時0分

トランプ氏が銃撃された事件のニュースを見て「あ、バイデン(大統領は)終わったな」と思いました。そしてついに「もしトラ」ではなく「バイバイデ~ン」になってしまいました。バイデンさんが出馬辞退を表明しましたね。

冷静に見れば、トランプさんもバイデンさんもどちらもいい加減、ジイサンで生物学的に大差はないはずなんですけど、「映像の力」に大きな差があるんですよね。

特に決定的だなと思ったのが、「アメリカ国旗をバックに手を振り上げるトランプ氏の写真」ですよね。あの写真はあまりにも「いい写真」すぎます。AP通信のカメラマンが撮ったみたいですが、構図もトランプさんの写りも完璧で、非の打ちどころがありません。

テレビマンとして、長年ニュースを作ってきた立場から言いますと、あんなに「強い画」があったらもう負けようがないですよね。

対するバイデンさんは「画が弱すぎる」んです。いろんなところで「ズッコケる映像」を撮られてしまってますし、ウクライナのゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と言い間違えたあと、ジョークでごまかそうとするときの「やっちまった顔」とかも、超痛々しいです。

「ジイサンvsジイサン」ではあるんですが「ギラギラジイサンvsヨボヨボジイサン」ということが明暗を分けました。

本当は「中身」で判断するべきなのに…と私も思いますよ。でも残念ながら、だいたい世間は「映像的なイメージ」に踊らされてしまうんですよね。

これは自戒の念を込めて言いますが、われわれテレビマンは「オイシイ映像」を見つけ出すのを一番の仕事にしています。ニュースのVTRを編集するときには、本能的にテレビマンは「強い画」を探し出すんです。「悪い人がより悪そうに見える映像」とか、「噓をついてごまかしている感じが明らかな映像」とか、「カチンときた瞬間の、笑顔は作っているが目は笑っていない映像」とか、そういうのを見つけたときにはガッツポーズします。そして、その映像を繰り返し繰り返し使い倒します。

決して褒められたものではないのは分かっています。結果的に世論にかなりバイアスを与えていますよね。でも、そういうものなんです映像って。だからニュース映像は、すごく怖いものなんです。

もちろん制作者もあまりえげつないことをしないように自戒しなければなりません。でも、ある意味「ニュース映像は怖い」と思って、視聴者のみなさんに気を付けてもらうしかないのかもしれないな、とも思ったりします。

■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。

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